イタリア 万歳

温風が出ない暖房なら乾燥知らず
地中海的食生活が潤いのある肌や髪を作る?!
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

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地中海性気候のイタリアは、日本と比較すると年間を通して空気が乾燥しています。それでも冬は、カラッカラになる夏と比べると湿度はやや高め。真夏は、ダブルのシーツを4つ折りにして部屋干ししても、匂いがつく前に乾くほどですが、冬は、そうですね、2日は放置する必要があるでしょうか。…夏より湿度はあるとはいえ、乾燥具合はなかなかのものがあります。

木枯らしに吹かれてお肌はカサカサ、髪はボウボウ。冬の日本は、美容の面ではもちろん風邪予防のためにも、声高に乾燥対策が叫ばれますが、さてイタリアではどうでしょう?

室内の保湿と言えば、加湿器が欠かせませんが、日本でよく見るシュンシュン蒸気を発するタイプは、主にベビー用品のカテゴリーになり、あまりメジャーな家電ではないようです。たまーに電化製品売り場で見かけはしますが、位置づけ的には「ちょっと珍しいモノ」。ちなみに、加湿器のことは、イタリア語で「ウミディフィカトーレ umidificatore」と呼びます。

一方、比較的よく見かけるのは、陶器製の加湿器。イタリアのデフォルト暖房設備であるオイルや温水を循環させる輻射式のヒーターに、ひょいっとひっかけたり上に置いたりして使います。

触っても火傷しない程度にしか熱くならないヒーターに、かようなものをつけたところで、加湿器として機能するのかどうか。そんな疑問も湧く消極的な加湿法ですが、中に入れた水は多少減るので、なんとなくは役に立っているようではあります。そもそもエアコン暖房より温風の出ないヒーターや暖炉がメジャーな冬のイタリアの室内は、「そんなもの」で十分なのかもしれません。

 室内の乾燥対策に、かなり消極的なイタリアですが、美を求めるお国柄。美容方面では、さぞかし話題に上りそう…ですが、こちらもさほど注目されていません。冬が始まる今の時期話題になるのは、強烈な夏の太陽ストレスのせいか、増える抜け毛をどうするか。肌は、シワとタルミ、セルライトをどうするか。まあ、これは夏も冬もなく、年中騒がれています。

夏より冬の方が湿度が高いとはいえ、ボーボーな髪やカサつく肌が潤うわけでもないので、これはもはや、体質的に乾燥しないのではなかろうか?と想像できますが、実際、シャンプー売り場に行けば、日本との違いは歴然。「グラッシ(脂性髪用)」の幅の効かせ方は、驚愕に値します。

そして、「金髪用」「クルクル髪用」「直毛用」「カラーリングした髪用」「傷んだ髪用」「艶のない髪用」などなど。「乾燥髪用」は、そんなバリエーションの中にひっそりと息づいている…感じです。

乾燥した地中海性気候に生まれ育った人々が、乾燥に強いのも当たり前ではありますが、そこには食生活も、大きく関わっているのではないでしょうか。たっぷりオリーブオイルを摂取するいわゆる地中海の食生活。毎日の食卓で使うオリーブオイルは、小さじ・大さじのレベルは越えており、瓶を傾けてドクドクドク…。

かくいう私も、イタリアに住み始めた当初(かれこれ13年ほど前でしょうか)は、肌・髪の乾燥対策に全神経を注いでいたのに、「油分控えめ」の日本の食卓からは想像もできないほどのオリーブオイルの摂取量の毎日で、気づけば、寄る年並みとは裏腹に髪はツヤツヤ、肌もしっとり。

体重も増えれば艶も増える。そのあたりは趣味嗜好の問題になりますが、奇しくも、美味な新オイルが出回る季節。美味しいオリーブオイルが手に入ったら、今年の冬の乾燥対策のひとつに、加えてみてはいかがでしょうか?(効果は個人によります)

ワンポイントイタリア語講座

これらの単語に「per…(ペル)」をつければ、「~用」となります。イタリア旅行中に、もしシャンプーを買う機会があったら…ぜひお役立てください。シャンプー売り場には、日本では絶対に見ないであろう「per capelli ricci da domare ペル・カペッリ・リッチ・ダ・ドマーレ 調教が必要なクルクル髪用」なんていうのもあって面白いですよ。ちなみに、コンディショナーはbalsamo バルサモ。シャンプーより扱いが少ないので、旅行の際に忘れるべからずです。