イタリア 万歳

イタリアの主食はパスタかパンか?
思いのほか種類のあるイタリアパン
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

上
下

イタリアを代表する食事といえば、パスタ。とはいえ、毎日パスタばかりを食べている…わけではありません。イタリア料理の流れは、前菜から始まり、プリモピアット(第一の皿=炭水化物系)、そしてセコンドピアット(第二の皿=メイン料理)、おまけにデザート…ではありますが、日々の食卓では、前菜+プリモかセコンド、もしくはどれか一皿だけ。といった具合で(伝統的な家族は除く)、ある日はリゾットだけだったり、お肉やお魚だったり、またある日はサラダがメインになったり。実は、結構いろいろです。

そんなわけで、パスタ料理は代表的ではありますが、日本的な「ご飯」のポジションとは、少々違うかもしれません。では何が、イタリア人の「ご飯ポジション」なのか?と言えば、それは、パンです!パスタが印象的過ぎて、イタリアのパンと聞いてもイマイチ、ピンとこなかったりもしますが、控えめながらもなくてはならない。そんな位置付けにあるのが、パンなのです。

前菜にパン、メインにもパン、パン・パン・パン…。パスタ料理にでさえ、パンは添えられるもの。レストランやトラットリアでも、席に着くとまずはパンが登場し、パンを食べながらメニューを選んだりするのは、よくある光景です。食事中にはご飯ポジションの役割を担い、順次出てくる料理の間をつなぐ。いつもアナタのおそばに…それがイタリア人にとってのパンです。

パンの語源は、ラテン語のPanisパニス。イタリアでは、数千年の昔から炭水化物と言えばパンであり、非常になじみ深い食べ物です。そゆえ、各地域の農産物や食文化と密接に結び付きながら、発展してきました。小麦やトウモロコシ、お米と素材いろいろ、製法いろいろ、形もいろいろ。イースト菌ありなし、固め柔らかめ…現在、全国で約250種類、1000以上のバリエーションがあると言われています。

ローマのロセッタ(亀の甲をイメージさせる丸みのある形で中は空洞)、サルデーニャのカラサウ(パリパリした薄いパン)、エミリア・ロマーニャのピアディーナ(トルティージャのような平たいパン)、トスカーナの塩なしパンなどなど、各地にご当地パンがあります。ピエモンテのグリッシーニ(細長いクラッカーのような食感)もパンの一種。これは、かつてサヴォイア家の王様が「エレガントに食べられるパン」をパン職人にオーダーして生まれたパンです。

全体的にバターを使わないサッパリとした素朴なパンが多いイタリアパンの中でも、特に美味しいのがシチリアを中心とした南イタリアのパンです(あくまでも主観ですが多分偏った感想ではないはず)。良質なデュラム小麦の生産地だけに、食べ応えがあり、噛めば噛むほどに味わいが高まる珠玉のパンに出会えます。

街中の至るところに店を構える薪窯のパン屋で、その日に食べるパンはその日に調達。まだほのかに温かいパンを入れた紙袋を抱えながら、焼き立ての香ばしさに包まれる…。そんな美味しいパンが買えたら、新鮮なオリーブオイルをかけて、チーズとサラミをつまんでワイン…。これで終わってしまう夕食の日もあります。

翌日まで持ちこして、固くなってしまったパンは、削ってパン粉にしたり、サラダやスープに加えたり。いつかまた「余ったパン・レシピ」をご紹介できればと思います。そうそう、少しだけ残ってしまった場合はさすがに捨てますが、敬虔なクリスチャンの中には、捨て際にチュッとキスをしたりする人もいるんですよ。パンは、キリストの肉体…ですから!

ワンポイントイタリア語講座

ポッソ・ファーレ・ラ・スカルペッタ?
意味:パスタのソースをパンでぬぐってもいい?

パスタを食べた後にお皿に残ったソースを、パンでぬぐって食べることをfare la scarpetta ファーレ・ラ・スカルペッタと言います。あまりマナーのよいものではないので、気軽なトラットリアならOKですが、気取ったリストランテでは避けた方が無難。でも、あまりにも美味しくて止らない!なんてときには、同行者に「パンでぬぐってもいい?えへっ」といった感じで聞いてみれば、「あらあら」とは思われないかも!