イタリア 万歳

クリスマスの準備に追われる年末、
朝寝坊必至、襟元正さず迎えるお正月?!
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

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 年末は、仕事納めで予定は早まるし「年内中に済ませなくちゃ」と気も焦り、なんだかんだと慌ただしくなるもの…と思っていましたが、ここイタリアは、少々様子が異なります。12月のイタリアも、慌ただしくテンション高めにはなりますが、それはひとえに、クリスマスがあるから。新年を迎えるための準備でもないので、「今年の汚れは今年のうちに」的な締めくくり感は、ほぼない。に等しい慌ただしさです。

 キリスト生誕を祝うクリスマスは、キリスト教において最大のイベント。クリスマスを、つつがなく平和に楽しく過ごすため、12月初旬からツリーやプレセピオなどの飾りつけ、親戚一同、友人知人に配るプレゼントの用意、そして来るべく当日の壮大な食事に向けての食材調達・担当決めなどなど。日頃ファストフードやインスタントを愛好し、ミサの日曜日にバーベキューを楽しむような人々も、準備に奔走します。最後の追い込みをかける12月24日。買い物客であふれかえる市場など、大晦日の御徒町になんとなく似ています。

 そうして準備が整ったら、24日の夜のミサに赴き、25日は親戚一同が集まり飲めや歌えやで1日を過ごし、翌日は燃え尽きた灰のように…。26日は、日本ではあまり知られていませんが、サント・ステファノの祝日。ちょうどいい具合にお疲れ休みデーが用意(?)されていたりします。

 24日の昼間が大晦日の御徒町なら、24日の真夜中のミサは初詣。クリスマスは日本の伝統的な元旦で、サント・ステファノの祝日は…さながら三が日を1日にまとめたような感じでしょうか。暦の上ではディセンバーなのに祝賀気分が最高潮に達してしまうイタリアの年末。では、27日以降はどう過ごすのでしょう?

 27日からは、なんと!平日に戻るのです。やや浮かれ気分を引きづりながらも28、29、30日と平日風に過ごして、いわゆる年越しムードは、あちこちから爆竹の音が鳴り始める31日の夕方から。Natale con i tuoi, Capodanno con chi vuoi (クリスマスは家族と、年越しはお好きな人と)と言われるように、年越しは友人や恋人と、豪華なメニューが並ぶチェノーネ(壮大な夕食)やカウントダウンパーティ、コンサートなど、思い思いのイベントで過ごします。

 クリスマスと比べると、自由度の高いカポダンノですが、決まり事が二つあります。それは赤い下着とレンズ豆。赤い下着は幸運を呼ぶそうで、レンズ豆は、小さな豆が「お金」を連想させることから「来年はお金がいっぱい溜まりますように!」との願いが込められているそうです。おせちの黒豆ポジションです。ザンポーネ(豚足ソーセージ)やコテキーノ(巨大なサラミソーセージ)を添えることもあります(モデナ地方の伝統がイタリア全土に広まったものなので、地方によっては食べない場合も)。

 赤いパンツをはいてレンズ豆を食べ、カウントダウンで花火を上げ(ナポリでは不要になった電化製品や家具を窓から投げ捨て)、朝までお祭り騒ぎで過ごしたら、好きなだけ寝坊するのがイタリアの元旦。清々しさもなければ、1年の計は元旦にない…新年の始まりです(笑)。そして2日からは、再び平常運転。意外に短いお正月なのです。

 ちなみに、クリスマス期間は、12月24日~1月6日(公現祭Epifania)まで。学校はお休みで、会社やお店などの休日は、ケース・バイ・ケースです。この期間をきっちり休む場合もありますが、年々減っているかも?

ワンポイントイタリア語講座

アウグーリ・ディ・ブオン・ナターレ・エ・フェリーチェ・アンノ・ノゥオヴォ!
意味:メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!

クリスマスカードの定番フレーズです。12月24日までに、謹賀新年を送ってしまうわけです。