イタリア 万歳

日本ではまだメジャーではないけれど
女性が幸せになれるお祭りがイタリアにはあります。
(text & photo by 岩田砂和子)

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2月のカーニバル(謝肉祭)を終えると、冬の気配が一掃され、街はいよいよ春。街路樹は黄緑色の新芽を吹き、気の早い花たちが開き始め、まさに街が「色づく」といった趣。街の人々の気分も浮き立ち、一年で最も華やいだ雰囲気に包まれます。

桜に良く似たピンク色の可憐な花をつけるアーモンドやユダの木、日本のものより大盤振る舞いに咲くプルーニャ(梅)。そして、フワフワとした黄色い綿菓子のような可愛らしい花が咲くミモザが満開になります。綿菓子…卵の黄身だけで作ったそぼろ…かもしれません。まあ、いずれにしても食べたら甘そうなこのミモザ、日本ではあまり注目されていませんが、イタリアでは春の到来を告げる重要な花。 3月8日に行われるフェスタ・デッラ・ドンナ(女性の日)でも、主役となる花です。

フェスタ・デッラ・ドンナとは、男性が日頃お世話になっている女性に感謝を込めてミモザの花を贈るというお祭り。恋人や奥さん、母親はもちろん、同僚や友達まで、女性なら年齢問わず、職業問わず、周囲の男性からもれなくミモザの花をプレゼントされます。日本にまだ根付いていないのがとても残念なステキなお祭りです。

このお祭りは、ナターレ(クリスマス)、カルネバール(謝肉祭)、パスクア(復活祭)とキリスト教のお祭りが多いイタリアにおいては、ちょっぴり異色な存在で、由来が女性労働者の悲劇にあります。 1908年のニューヨークの繊維工場で働く女性たちが、労働条件の改善を求めてストライキを行ったところ、怒ったオーナーが工場に火を放ち、立てこもっていた女性労働者129人が命を失うという衝撃的な事件が起きました。この事件の日が3月8日。追悼の意を込め「国際婦人デー」として定められ、各国で女性労働団体のデモなどが行われますが、イタリアでは、女性のシンボルとも言われる可憐なミモザの花を男性から女性に感謝の意を込めて贈る日となったのです。

街にはミモザの花束を売るワゴンも出て、せっせと男性たちが花束を買っている姿が見られます。イタリアの男性たちは、この日に限らず機会があるごとに気軽に花束を贈ってくれますが、こんな風に毎年当たり前に花束を買う習慣があるから、慣れているのかもしれません。恥ずかしがりやの日本の男性たちが花束を買いやすくなるように、フェスタ・デッラ・ドンナが日本でも根付くといいなと思います。習うより慣れろという言葉もありますからね。チョコレートメーカーがバレンタインデーを流行させたように、花業界がキャンペーンを企てても良さそうです。

ワンポイントイタリア語講座

意味:おめでとう!

クリスマス、お正月をはじめとする祝祭日や、誕生日などうれしいイベントごとで使われる言葉。お誕生会で歌われる♪Happy Birthday to you~もイタリアでは♪Auguri a te~とメロディーそのままに歌われます。フェスタ・デッラ・ドンナでも、「春が訪れたね~」といった気持ちで使われます。