イタリア 万歳

秋の夜長は映画館で待ち合わせ
イタリア人は映画中も黙っていません!
(text & photo by 岩田砂和子)

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映画と言えば、最近ではレンタルDVDやインターネット経由でご覧になる方も多いかと思いますが、イタリアでは映画館に赴くことがかなりの頻度であります。街にはレンタルDVDのチェーン店もありますが、やはり映画は映画館が主流。それも時間が空いたときに一人でというよりも、友達や家族や恋人と…待ち合わせをしてゾロゾロと行くものなのです。

その理由には「最終上映時間が遅い」ことがまず筆頭にあげられます。初回上映が15時過ぎ、それから順を追って、最終上映は22時台。23時近い時間に始まることもあります。日本でも最近は、六本木や渋谷などではレイトショー的なものもあるようですが、基本的には午前中から始まって、最後は19時ごろではなかったでしたっけ?なかなか平日に映画を観るのは困難だった思い出があります。その一方、週末は混んでるし。イタリアでは、仕事を終えて夕食をゆっくり食べた後に、「さて、映画でも行きますか。」と行けるので非常に便利。それゆえ、映画館に行く頻度が自然と増えるように思います。

まあ、そもそも終電の概念がないため、そんな遅い時間から映画をのんびり観てられるというのもあります。一晩中地下鉄が走っているなんてわけではなく、イタリアの街はどこも規模が小さいから、夜の移動が比較的楽チン。タクシーで移動してもわずかですし、出かけるときは自転車・バイク・車など、自前の乗り物を利用する場合がほとんど。ローマの中心地で働いていても、一度家に帰って車で再出発。そんなことも大して苦になりません。もちろん、仕事が終わる時間が日本よりは少々早目であることは、付け加えておかなければなりませんが(笑)。

イタリア人は、比較的個人行動よりも集団行動の方がお好きなようで(仕事のときはグループワークは苦手なくせに(?!))、何事もみんなでワイワイとやりたがります。映画もしかり。映画館前で待ち合わせ、ひとしきりおしゃべりした後、各自別々に映画を観て、そして終わるとまた集まってワイワイと映画批評に花を咲かせます。映画も大事ですが、この集まっておしゃべりが、また大事なんですね。老若男女、誰もがおしゃべりなイタリアですから。

さて、そんなおしゃべりなイタリア人が、映画上映中に黙って観ていられるのか?と言えば、やっぱり黙っていられるはずもなく…。イタリアで映画を観て「これは、いい習慣だ!」と驚いたことですが、なんと上映中に一回、休憩時間があるのです!それは、Intervalloインテルヴァッロと呼ばれるもので、ちょうど半分くらい終わったところでブツッと映画が中断されます。すると、待ってましたとばかりに、「ねぇねぇ、あの主人公さぁ」とか「あの人物はこの先こうなるね」など、前半中に溜め込んでおいたおしゃべりを一気に吐き出すわけです。 しかし、合図もなく唐突に後半が始まったりするのは困りもの。ウロウロ立ち歩いておしゃべりしていたのを中断し、暗闇の中、ワラワラと大慌てで席に戻る様子につい笑っちゃうから。

映画中はさすがにマナーよく静かに鑑賞しますが、マナー違反にならない声は聞こえます。笑い声はもちろん、かわいそうなシーンのときには嘆きの声が、果敢なシーンには賞賛の声が、緊迫のシーンでは息を飲む声(?)が、そして、ハッピーエンディングや痛快な結末には「ブラヴォー」の声と共に拍手で締めくくられます。静かに観るはずの映画…ではありますが、盛り上がりっぷりは最高。イタリア人は、映画でもなんでも観劇上手だなぁと思わされます。見知らぬ人々と空間を共有し、共感するのはなかなか楽しいもの。一人で家で観るのもときによろしいものですが、映画館なりの楽しみ方がそこにはあるわけです。

ワンポイントイタリア語講座

意味:この声優さん、うまいねぇ!

イタリアの映画は、なんと、ほとんどがイタリア語吹き替えです。吹き替えは doppiaggioドッピアッジョ、吹き替えをする声優はdoppiatoreドッピアトーレ。イタリア人の中には、本物のブラピやジョージ・クルーニーの声を聞いたことがない!なんて人もたまにいる程。これがまた上手なのですが、さすがに日本人俳優が流暢なイタリア語で話してるのは、なんとなく不思議な感じです。