イタリア 万歳

イタリア人って働くのが好きじゃないって?
それは印象だけかもしれません。
(text & photo by 岩田砂和子)

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面白い話を聞きました。それは、東京に最近よくあるイタリア風のバールで働いていたイタリア女性のお話。 彼女は「日本人と働くと疲れる」と言うのです。世界でも勤勉で知られる日本人です。 「日本人と働くと、きめ細かいし丁寧だし信頼できるし、働きやすい」。とそんな言葉をよく聞きますが、これはいかに?!  彼女は世界でも有数の働く人が少ない(?)街ナポリの出身。ああ、きっと周りがきっちり働きすぎて、それに合わせるのが大変なのかな?とも思いました。

しかし、よく話を聞いてみると…。「例えば、テーブルを一回拭くじゃない?それでお客さんが来なくても、しばらくするとまた拭くのよね。 なんでって聞くと、突っ立ってるとサボってると思われちゃうからなんだって」。彼女は続けます。 「そうやって、せっせと働いているような姿を上司や突然入ってきたお客さんに見せることってそんなに大事なの?」。

やるべき仕事はやったのなら、ムリやりやることを見つけることもなかろう。次のお客さんがくるまではリラックスする時間。 その間にひと休みしておけば、次のお客さんがきたときには満面の笑顔で対応できる。と言うのが彼女の理論。 「お客さんがいないなら座ってたっていいじゃない?2回も3回も使ってもないテーブルを拭くなんて!」。 それでどうしたかと言うと、「いろんな人に会えるからこの仕事は好きだったし、 ココは日本だからこの習慣に合わせなければと頭では理解したけど、心で理解できなかったからつらくてやめた」。 んだそうです。わかりやすいです(笑)。

こんな彼女の様子を見た元の同僚たちはきっと「やっぱりイタリア人って働くのが好きじゃないんだな」。と思ったに違いありません。 でもそうなんでしょうかね?

私は、フリーランスのカメラマンやジャーナリストなどと一緒に働く機会が多いですが、彼らの仕事ぶりには、感心させられることがしょっちゅうあります。遅刻は多々ありますが、多少遅れてきても天下一品の集中力と創造力を発揮して、予想よりもいい仕上がり、予想よりも早く終わることも多いのです。よくあることですが、カメラマンさんに「もしかしたら使うかもしれないから、念のため、コレも撮っておいて」。と言うと、たいてい嫌がられます。でもそれは、働くのが嫌だからと言うより、無駄なことはしたくないから。念のため、や、一応、などそういった考え方をしない分、「使う」と判断したものはきっちり仕上げてくれます。最短時間で働いて、で、とっとと家に帰ろう。というのが彼らのスタンス。皆、お家が大好きですから。

愛情を注げる、自分の能力が発揮されている、と感じる仕事をしているときのイタリア人は、とっても頑張りやさん。医者や弁護士をはじめ、建築家やデザイナーはもちろん、お肉屋さんやパン屋さんや職人さんに至るまで、プロフェッショナルないい仕事しまっせ、と言った感じ。その変わり、自分が納得できない場合は、惜しみなく職を変える人も多いものです。たとえそれが40歳過ぎてても。貴重な一回きりの人生ですからね、死ぬまで「もう遅い」なんてことはないんでしょうね。

好きな仕事を好きなようには頑張れるけど、仕事してる風な香りを醸し出したり、嫌だと思いながら働くのが苦手なのかもしれません。自分にとても素直な働き方が「イタリア人は働かない」のイメージになっているのかなと思います。ところで、件の彼女は、現在プライベートの教師をしています。資料作りや営業など、早朝から遅くまで感心するほどよく働いています。

ワンポイントイタリア語講座

意味:何に必要なの?

Si serveの原型は、「servirsi(セルヴィルシ)仕える、役に立つ、必要である」。「で、何に必要なわけ?」なんて言いたくなることってありますよね。そんなときに使えるフレーズです。