イタリア 万歳

健康的な食事をたくさん食べて太っても、
それはきっと適正体重?!
(text & photo by 岩田砂和子)

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イタリアに住み始める前に、フィレンツェでホームステイをしていたときのことです。 食卓に並べられる料理の量に辟易しながらも、まだ可憐な20代だった私は、「これ以上は食べられません」と言い出すことができず、 毎晩、アンティパスト、山のように盛られるパスタ、セコンドピアットの肉料理をやっつけ、さらにドルチェもいただいて、下を向くことも出来ない状態で部屋に戻り、 胃薬を飲んでベッドに横たわり、高い天井を見上げては、「明日こそは勇気を出して言おう、量を減らして、と。」と心に誓い眠りにつく日々を送っていました。

しかし・・・なかなか前夜誓った言葉を言い出せないままに日々は過ぎ…。いつものように悪戦苦闘をしていた夜、ふとあることに気付きました。私の前に盛られるパスタの山は日を追うごとに大きくなっている…?毎晩、義理堅く全部平らげていたため、ホストマザーは「足りないのかな?」と勘違いしてしまった模様。間違った思いやりに、もはや、量が多すぎるとは言い出せなくなってしまいました。

そんな風に過ごして2週間も経つと、胃袋が成長したのか、ムリもせず快調に食べられるようになっていました。もちろん身体全体も成長し、日本から持ってきた洋服はどれもパツパツになる有様でしたが。

パクパクと何でもよく食べる私にホストファミリーは、いつも「ブラーヴァ!」と声をかけてくれました。
イタリアでは、たくさん食べると褒められる。イタリア人と初めて日々の食卓を共にした、あの頃の思い出は忘れられません。

イタリア人と囲む食卓が楽しげに見えるのは、皆がパクパクと美味しそうに、そして、楽しくおしゃべりしながら食べるからだな、と感じます。パクパクと美味しそうに食べる人との食事は、食欲増進効果やストレス解消の効果もありそう。食卓に並んだ料理について、
「これはどこそこの名産なんだよ。」
「このソースとパスタは合うねぇ。」
などと、あれこれとコメントを炸裂させながら、ワイワイと食卓を囲む。料理を作った人も甲斐があるし、何しろ楽しくて食が進みます。

たくさん食べる人も多いイタリアですが、その内容にとても気を使う人も多いもの。幸いイタリアには、インスタント食品が少ないので、食べたくてもなかなか手に入りません。そのため、食材を買って調理するのが当たり前。旬や食材の組み合わせ、添加物のあるなし、産地や生産者などなど、敏感な視点を持って日々の食材を選びます。「大事な自分に食べさせるものを適当には選べない。」といったところでしょうか。

んな皆につられてパクパク美味しく食べながらも、やはり気になるのは体重。ブラーヴァ、ブラーヴァと褒められて、イタリアに住み始めて体重はウンkgほど増えましたが、どうも以前より健康になった気がします。
「きっと、適性体重になったってことだな。痩せすぎはよくない。ウンウン。」・・・と自分を納得させつつ、今日も美味しく食事をしています。

気にすべきは、量より内容。メタボが気にされる昨今ですが、健康的な食事を美味しく楽しく食べて、不健康になるのはきっと難しいはずです。

ワンポイントイタリア語講座

意味: 食いしん坊、よく食べる人

「食いしん坊」と言ったって、決して悪い意味の言葉ではありません。「美味しそうにたくさん食べる人」のポジティブな意味で使います。Buonaブォナは「よい・スバらしい」Forchettaフォルケッタは「フォーク」の意味。よく食べられるステキなフォークを持っているといったイメージですね。