イタリア 万歳

本場イタリアにはローマ風とナポリ風の
2種類ありますが、特徴はその生地にあります。
(text & photo by 岩田砂和子)

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イタリアのPIZZA(ピッツァ)は、大きく分けて2タイプ。厚みのあるナポリ風と薄焼きのローマ風があります。日本の宅配ピザでは、なぜかクリスピーなローマ風が「イタリア風」となっているようですが、イタリアでは、やはり発祥の地であるナポリ風が「正式」なイメージ。もちろんローマ風も歴史は古く、ご当地ローマには、3代目が次ぐ老舗が何軒もありますが。何においても「発祥」や「伝統」をリスペクトするイタリア人にとってみれば、ちょっと不思議な印象では? と、イタリア人に聞いてみると、「宅配ピザはイタリア料理じゃなくて、アメリカ料理。だから、アメリカ人が決めたイタリア風だから仕方ない」。だそう。ちなみに、「ピザ」と「ピッツァ」は違うもので、前者はアメリカ流ピッツァのこと、後者は本場イタリア流ピッツァのこと、だそうです 。

本場イタリア流のさらに本場のナポリ風は、厚みのある生地が特徴。薪窯で焼き上げられた熱々のピッツァは、フワフワモチモチ食感の生地に、トロトロにとろけたチーズが絡まって、得も言われぬハーモニーを口の中で奏でます。「本物」を初めて食べたときの衝撃は、今も忘れられません(かれこれ15年は前ですが)。今まで食べていたピッツァ(「ピザ」ですね)は何だったんだ?!と目から鱗がハラハラ落ちるようでした。一方、ローマ風は、その薄さが特徴。1cm 以下のサクサクパリパリ食感は、薪釜焼きの香ばしさを引き立てます。お店によっては、なんと20gの生地ダネを直径30センチほどに伸ばせる職人さんもいて、その技と軽さは、これまた本場ならでは。どちらが好みか選ぶのがなかなか難しいほど、それぞれの魅力があります。

そんなイタリアの2つのピッツァ。どちらにも共通の特徴は、「ピザ」のように、あまりゴテゴテと具を載せないこと。かの有名な「マルゲリータ」は、モッツァレッラチーズ、トマトソースとバジリコ、「マリナーラ」は、トマトソースとにんにくとオレガノだけ。 なぜにそれほどシンプルかと言えば 、各店競って配合や熟成方法を工夫した生地ダネを、絶妙な火加減で焼き上げた「生地」を味わうのが本場ピッツァの醍醐味だからです 。

数十年の経験を積んだ職人が伸ばした生地は、数百℃にもなる薪窯で一気に焼き上げられます。具にもしっかり火を通しつつ、焦がさず、ナポリ風ならフワフワに、ローマ風ならサクサクに。熟練職人の絶妙な火加減で生み出される美味なる食感。そんな「焼きの妙」を味わうためには、ナポリ風、ローマ風とも熱いうちに食べきるのが鉄則です。ナポリ人とピッツェリアに行ったとき、それまでワイワイ激しくおしゃべりしていたにも関わらず、ピッツァが到着したと同時に、誰もが口を閉ざし、一心不乱にピッツァに向かい始めたことも忘れられません。これがナポリのピッツァのマナーなのか~!と。「こだわりのラーメン」と同じ感覚ですね。早く食べないと麺がのびて不味くなる…。早く食べないと、チーズは固くなり、大切な生地の食感も失われてしまう。ピッツァの美味しさは、熱々のときに最高潮になるわけです。

取り分けているヒマもないからか、イタリアではピッツァは一人一枚が基本です。シンプル素材の具材と生地を高温で焼いたピッツァは、、大きさの割りに消化がよく、一人一枚でもペロリ。もちろん、美味しくないとムリですけどね。イタリアのピッツェリアでは、若い人はもちろん、ご老人も良く見かけます。自分の顔より大きいピッツァを、躊躇なく食べるその姿には、「元気だな~」と思わずにいられません。

ワンポイントイタリア語講座

意味: これ以上、ムリ~!

「もうダメ~食べられなーい」。といったときに使うフレーズ。ピッツァ一人一枚が基本とはいえ、日本人には少々多め。1/4枚ほど残したあたりで、使うのがタイミングよし。他にも、仕事でいっぱいいっぱいのときや、人間関係に疲れたときなどの場面でも使えます。