イタリア 万歳

イタリアでは、年に2回実施されるサルディ。
今年は開催日が早まり、街では悲喜こもごもが…。
(text & photo by 岩田砂和子)

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モード界は今、早くも2008-2009年秋・冬コレクションの真っ只中ですが、街の方ではただ今、2007-2008年秋・冬のバーゲン真っ最中。街中に、「SALDI」(サルディ)の文字が溢れています。「サルディ」とは、イタリア全土で開催されるバーゲンセールのこと。毎年夏と冬、年に2回実施されます。その開催日程は法律で定められ、各店舗が勝手に開催することを禁止しています。

開催日程は各州ごとに異なり、ローマを州都とするラツィオ州は「1月第二週の土曜日から6週間」、フィレンツェを州都とするトスカーナ州は「1月7日から 3月7日まで」といった具合。「ローマはいよいよ明日から!」などと、TVや新聞で公的に宣伝されるので、デパートやショップが独自のデザインを駆使したポスターやDMを作る手間が省けます(笑)。また、同じ州内であれば、すべての店で一斉に始まるサルディ。今週はこちらのデパートがセール、あちらのデパートは来週から...といったことはなく、期間中は、一歩家を出れば、そこはセール中。買い物する方にとっても便利なのです。

だいたいどこの州も、毎年1月6日を過ぎたあたり、つまり、お正月気分もそろそろ抜けた頃からボチボチ始まるものでしたが、2008年冬のサルディから、その事情が少々変わってきました。ローマやミラノではいつもより約1週間早い1月5日から、ナポリは例年より3週間近く早い1月2日からと、開催時期が全体的に早くなりました。そのため、年末から「サルディ」が話題となり、売り手側からは「クリスマス商戦に大打撃」と苦情の声が聞こえてきたのです。

2007年末、毎年最も消費が高まるはずのクリスマス商戦での売り上げが、昨年と比較して 数十%も下がったことが発表されました。これを受け、ショップのオーナーたちから、 「ここ数年続く物価の高騰で、クリスマス用の食品の売り上げが減少したことに加え、サルディが早まったことでプレゼントすら買い控える人が出てきた。ダブルパンチだ!」 といった声が上がったのです。クリスマスからほんの1週間も待てばサルディ。ならば、親しい人や家族には、「プレゼントはサルディで!」とした人が多かったとか。物価上昇の続くイタリアでは、それも致し方なかったのかもしれません。

実際に、街では、クリスマス終了後から予測より下回った売り上げを挽回するために、イタリアでは稀に見る(?)営業努力を目の当たりにする場面も多々ありました。サルディの規定開始日より前に「SALDI」の札や、値引きの告知ができないため、お店に行けば店員さんから「レジで割引きしますよ。」とそっと耳打ちしされたり、よく行くショップからは携帯のSMS(ショートメッセージ)に「お得意様にだけ、サルディ前から特別価格でご奉仕」といったDMが届いたり。中途半端に早いサルディ開始日のままでいけば、実利主義のイタリア人の前で、規定の開始日は単なる「SALDIの張り紙を張り出す日」と化してしまうことでしょう。

さらに、通常は30%OFFからスタートし、徐々に50%、70%と上がっていった割引率も、今年は初っ端から50%OFF。開始日が早まったことで、消費者にとってはおトク感が増した2008年冬のサルディでした。
さて、次回はどうなることやら?次のサルディは、2008年夏。7月上旬から全国各地で始まります。

ワンポイントイタリア語講座

意味: もう、割引してます?

もし、サルディ開始前にお買い物をするなら、このフレーズは重要です。これには、「もう始めちゃってるでしょ?」といった意味合いが隠されています。一方、「もう、サルディ始めてますか?」と真正面から聞けば、絶対に「No!」(まだよ。)と言われます。たとえこっそり割引してても…。暗に示唆する。それは、イタリア流エレガンスだったりします(本当か?!)。