イタリア 万歳

年末年始のビッグイベント、ナターレとカポダンノは、
どんな風に過ごすのでしょう?
(text & photo by 岩田砂和子)

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イタリアの年末年始のお休みについて、聞かれることがよくあります。夏は、1ヶ月近く閉めるお店もあるぐらいだから、年末年始も街はがらーんとしてるのでは?と思われるようですが、イタリアの商店はクリスマス期間と1月1日がお休みになるだけ。意外と短いんですよね。ただし、クリスマス期間と1月1日はきっちりと閉まってしまいます。その間、街の人々はどんな風に過ごしているのでしょう?

24日夜のクリスマス・イブは、イタリアではヴィジリア・ディ・ナターレといい、「キリストの聖誕を待つ」という意味がある夜になります。街中にあるあちこちの教会では、夜通しのミサが開かれます。それゆえ起きている人々も多いはずだし、街をあげてのドンちゃん騒ぎにでもなるか...と思えばそうでもなくて、街はきちんと粛々とした雰囲気に。やっぱりキリスト教の国なんだな~と実感する夜でもあります。翌日25日は、開いてる店もほとんどなく、歩く人もまばら。いつもは車のクラクションや人々の話す声でうるさいローマの街も静寂に包まれ、時折響き渡る教会の鐘の音がすがすがしい、いかにも聖なる朝を迎えます。

ただ、聖なる気分はお昼まで(笑)で、この日、つまりクリスマス当日の25日に最も重要なことは、ミサではなくランチです。お正月の御節さながら数日前から準備された大量の料理とお菓子の数々を延々と食べ続ける有名なイタリアのクリスマスランチが各家庭で実施されています。この日のランチがどれだけ大切なのかと言えば、なんと地下鉄やバスもランチ中は運行休止になる位。運転手さんたちもお家に帰って、クリスマスランチなんですね、きっと。そして、どれだけ食べ過ぎてしまうかと言うと、テレビのコマーシャルでこの時期だけ消化剤の広告が入るほど。寝ている間に猪に乗られる夢を見てうなされた男性が、パジャマ姿で消化剤を飲んで、ホッとしながら再び眠りにつくCMは、「なるほど。」と感心してしまいました。「猪か~。うん、でもまさにそんな感じ」なのです。

そして、26日はあまり知られていませんが「サント・ステファノの日」という聖人ステファノを祀る日で、祭日となります。24日夜から26日いっぱいは(たとえ家の中ではパーティが繰り広げられていたとしても)、街中はシーンと静まり返っています。

26日に前日の食べ疲れをしっかり癒したら、27日からは通常営業。そして、31日の夕方から、街は新年を迎える準備に入り、にわかに盛り上がり始めます。新年を迎える準備と言っても、今度はあまり静粛な雰囲気はなく、まさにドンちゃん騒ぎの準備といったところ。クリスマスは家族と共に粛々と過ごした人々も、大晦日は友達同士で集まりカウントダウンパーティ。広場やロカーレ(バーやラウンジなどのお店)でもカウントダウンコンサートや大規模なパーティが催され、1月1日の朝まで街中が賑わい続けます。

1月1日0時0分を待って、5、4、3…とカウントダウン。そしてゼロー!となった瞬間、パッパー!バチバチバチ!!!と、車のクラクションや爆竹の激しい音が鳴り響き、いたるところから打ち上げられる花火で空は真っ赤。窓やバルコニーから投げられるロケット花火や爆竹も加わって、あたり一体、煙と光と音の渦となります。そんな中、シャンパンを開けて「Auguri!アウグーリ!(おめでとう!)」と、乾杯しながらだれ彼かまわず抱き合って頬にバーチョ(キス)で新年を祝います。そして、イタリアにはなぜかこのタイミングで窓から不要なものを投げ捨てる(?)不思議な習慣があるため、この時間帯には外を歩けません。不要なもの、それは粗大ゴミ。火のついたロケット花火や爆竹が頭上から降ってくる上、冷蔵庫や家具までが降ってくる夜。少々危険な新年の幕開けとなるのです。

そして、1月2日からは通常営業。べファーナの日と呼ばれる1月6日の祭日を最後に、年末年始気分は終了。街のムードは一気に「冬のサルディ(バーゲン)」へ突入します。

ワンポイントイタリア語講座

意味: 新年おめでとう!

1月1日はCapodannoカポダンノ。大晦日は、Vigiliadi Capodannoヴィジリア・ディ・カポダンノ。カポダンノ以降は、「明けましておめでとうございます。」と同じ使い方で「ブオン・アンノ!」と挨拶します。「どうぞよい一年を!」の意味が含まれています。