イタリア 万歳

甘いドルチェとキスで迎える朝は、
寒くても優しい一日になります。
(text & photo by 岩田砂和子)

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ホテルの朝食ルームに並ぶブリオッシュやコルネット。イタリアに一度でも旅行に行かれたことのある方はご存知でしょう。手作り風のケーキやタルトがずらりと並んでいる場合もあります。お洒落なホテルならハチミツをかけたリコッタチーズなんてちょっと驚く朝食メニューが並ぶことも。もちろん、塩味のパンやサラミやプロシュートだってありますが、それは、外国人旅行者のためのもの。イタリア人宿泊客はあまり手をつけません。そう、イタリアの朝食は甘いものと決まっています。

甘いコルネットに、手作りのジャムや新鮮なハチミツなど、こってこての甘いトッピングを添えてパクリ。イタリア人なら皆が大好きな逸品のチョコレートクリームNutella(ヌテッラ)をトロリとはさんだコルネットも美味しい。ローマでは、このコルネットを半分に切って、中にたっぷり…溢れんばかりのホイップクリームを挟んだコルネット・コン・パンナも人気だし、イタリア人の中でも甘い物好きが多いことで知られるシチリアでは、伝統菓子「カンノーロ」(筒状の固いパイ生地にリコッタクリームを詰めたもの)も朝食でいただきます。本場のカンノーロは、コメカミがしびれるほどの甘さです。

朝食の定番的な主食となるコルネットは、いわゆるクロワッサンのこと。フランス風のサックリしたタイプとは異なり、皮はパリッと薄く、中はしっとりした比較的小ぶりのものが多くなります。そして朝食の最後は、お砂糖をたっぷり入れた甘苦いカッフェで締めくくり。たちまち糖尿病になりそうな甘い甘い朝食がイタリアの「普通」なのです。

納豆や生卵にゴハンといった塩味の朝食に慣れた日本人にはこんな甘い朝食、ちょっとビックリしますが、一方、「日本人は朝から焼き魚を食べるんだって?!」とイタリア人は驚きます。しかし、慣れると甘い朝食は「はまり」ます。甘い物は別腹なんて言われるくらいだから、食欲がなくても食べられるし、少量でも満足感。そして、脳の目覚めにもいいような実感があります。あまりの甘さにパッキリと目が覚める…のかもしれませんが、聞くところによると脳の栄養は糖分。理にかなった朝食であるとも言えるわけです。

そしてイタリアの朝に欠かせないのは、寝ぼけ眼で「おはよう!昨日は良く眠れた?」とか「今日の調子はどう?」などと言葉を掛け合いながら、朝のバーチョ(キス)。甘い朝食と共に、優しい気持ちに包まれたイタリアの朝は、寒くても元気が出てきます。「起き抜けの焼き魚」よりもよほどロマンチックな甘い朝。1日の始まりは、こうでなくちゃ。朝から甘い物なんてちょっと…という人でも、大切な家族と掛け合う優しい挨拶と甘いキスがあれば、一日、イタリア人並みに元気に過ごせるはず。甘さの足りない日本の暮らしに、イタリア風のドルチェな朝をぜひ取り入れてみてはいかがでしょう?

ワンポイントイタリア語講座

意味: おはよう!良く眠れた?

「おはよう。」だけじゃなく、相手の身体や調子を気遣うちょっとした言葉を掛け合うだけで、コミュニケーションは円滑に。そもそもBuongiornoだけでも「良い朝」の意味が含まれるイタリア語ってなんだかポジティブですよね。朝はこうやって迎えたいもんです。