イタリア 万歳

イタリアの秋の味覚フンギやトリュフ。
ローマには、「プンタレッレ」もそろそろ到着!
(text & photo by 岩田砂和子)

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そろそろ秋の味覚が出始める時期。イタリアでは、早くもブドウの収穫が始まり、市場には秋の到来を告げる野菜をはじめとした食材が並び始めます。夏の間、山積みになっていたスイカや桃は徐々に姿を消していき、フンギ・ポルチーニはもちろん、カボチャやカーヴォロ(キャベツ)など、秋から冬が旬の野菜たちのスペースがだんだん広く大きくなっていく...。日本同様に四季がはっきりしているイタリアでは、食べ物から季節感を存分に感じることができます。

季節折々の味覚を楽しむ文化は日本のそれととてもよく似ていて、特に秋はフンギ・ポルチーニやトリュフなど、他の季節よりも限定感のある魅惑的な食材が出荷される時期でもあるため、出荷時期にはマツタケ到来のニュースさながらの盛り上がりを見せます。新鮮でプリプリのフンギ・ポルチーニは生のままスライスし、パルミッジャーノ・レッジャーノチーズとレモンとオリーブオイルで和えてサラダにしたり、傘の部分だけオーブンで焼いたり。パスタやリゾットで食べるだけでなく、フンギ・ポルチーニそのままを贅沢に使った料理も、旬ならではのお楽しみです。

傘から足部分を引き抜いて、開いた穴にニンニクのみじん切り、ネピテッラ(フンギ・ポルチーニ料理に欠かせないハーブ。日本語訳は「イヌハッカ」)を詰めてたっぷりのオリーブオイルをかけてオーブンで焼くだけの「Funghi Porcini alla Griglia」(フンギ・ポルチーニ・アッラ・グリーリア)は、残った足を細く裂いて小麦粉をまぶし、熱したオリーブオイルでカラリと揚げれば、短時間に2品が完成。フンギ・ポルチーニを骨の髄まで楽しむ、イタリア風秋の家庭料理のひとつ。大きめのキノコなら日本のお家でも簡単に出来そうですよね。ネピテッラもなかなか手に入らないかもしれませんが、ミント系のハーブなら代用できそうです。

さてさて、ここローマには、フンギ・ポルチーニの他に、秋ならではのお待ちかね野菜がもうひとつ。それは、知る人ぞ知る「Puntarelle」(プンタレッレ)。シャキシャキの歯ごたえとほんのりとした臭みが一度食べると癖になる幻のローマ限定の季節野菜です。9月後半ともなれば、袋詰めにされたプンタレッレが市場はもとより、スーパーマーケットにも並び、どこのトラットリアでも見つかる野菜なのですが、イタリア人でもローマ以外の出身者は「食べたことがない」もしくは「知らない」と言われるほどにローマな野菜。これだけ流通が発達した21世紀になってもまだまだご当地でしか食べられない食材が残っているとは、さすがイタリアです。

このプンタレッレは幅広の茎にトゲトゲした葉がついていることから、プンタ(先端、とがったなどの意味)レッレと呼ばれます。食べるのは主に茎部分。タテに裂いた茎を水にしばらくつけ、クルリと丸まったら水を切り、ほぐしたアンチョビ、オリーブオイル、にんにくのみじん切り、ホワイトビネガー、塩少々を混ぜたドレッシングと和えてサラダにしていただきます。プンタレッレのシャッキリした歯ごたえとほんのりした臭み、ドレッシングの酸味とアンチョビのほろ苦さなどが合間って、絶妙な美味しさを奏でます。

ちなみに、プンタレッレの本場ローマにいながら、アンチョビソース和えのサラダ以外でプンタレッレを食べたことがありません。朝はエスプレッソと甘いもの、ピッツァは夜食べるもの、夏は海、などいろいろな決まりごとが存在するイタリアでは、「プンタレッレはアンチョビソースのサラダで」と決まっていても、まあ、不思議ではありません。癖の強い野菜なので、他の調理の仕方やメニューがあるとも思えませんが、ドレッシングだけ変えてみてはどうかと、試しにホワイトビネガーをレモンにしてみましたが、微妙に味のずれがありうまくいきませんでした。また、ぺペロンチーノを加えてみたり、黒こしょうやゴマなんかも試してみましたが、まったくダメ。たかがサラダ、されどサラダではありますが、「プンタレッレのアンチョビソースサラダ」は、ローマの秋冬を彩る不可侵的伝統料理のひとつなのでありました(実証済み)。

ワンポイントイタリア語講座

意味: プンタレッレ、ある?

プンタレッレは9月後半から3月初旬にだけ見つかる季節限定ローマ野菜。時期はじめには、「もう届いた?」というニュアンスでお店の人やトラットリアでこんな風に聞きます。ところで、プンタレッレをセロリに変えても「ややプンタレッレのアンチョビソースサラダ」の趣は味わえます。日本でもぜひお試し下さい!