イタリア 万歳

イタリアはいわずと知れたバカンスの本場。
本場のイタリア人は、どんな風にバカンスを過ごすのでしょう?
(text & photo by 岩田砂和子)

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日本はそろそろ梅雨に突入するこの時期、イタリアは早くも夏到来!真っ青な空が広がり、いよいよ強くなる地中海の太陽。サングラス無しでは外を歩けないほど、何もかもがまぶしく輝いて見える季節です。気温も30度を超える日々が続き、週末は海へ向かう車で大渋滞。小学校、中学校、高校もなんと6月初旬から夏休みに入り、新学期が始まる9月中旬まで子供たちは(一切勉強のことは考えず)のびのびと海に山で真っ黒になるまで遊びまくり。なんともうらやましいイタリアの学校システムです。もちろん大人たちにとっても、7月8月に迎えるバカンスのピークを前に、なんとなく気持ちが浮き立つ楽しい季節。この時期の定番の挨拶、いわゆる時節の挨拶は「今年のバカンスはどこへ行くの?」です。

「イタリアって一ヶ月も夏休みがあるって本当?」と聞かれることがしばしばありますが、実際のところ、丸々1ヶ月も休むのはバカンスの国イタリアでも難しく、3週間前後が平均的です。しかし、バカンス前の前後1週間ずつ程は、ほとんど仕事が手につかないといった状態になるため、そのぼんやりした時期を含めると、1ヶ月以上はバカンス気分...と言っても過言ではないかもしれません。バカンス前の一週間は浮かれて、バカンス後の1週間はバカンス疲れで...。イタリアと関わる仕事をしたことがある人は、誰でも経験がありますが、真夏はなかなか仕事が進行しないというのは本当です(笑)。

ところで、バカンスと言う言葉、日本でももはや普通に使われるようになりましたが、本来の意味としての「バカンス」をご存知ですか?バカンスはイタリア語では「ヴァカンツァVacanza」。語源はラテン語で「ヴォートVuoto」。意味は「空っぽ」です。つまり、何も無い状態であることを意味します。本場イタリアでは、単なる「夏休み」というよりも、日頃のしがらみやストレスから徹底的に開放されて、「無」になることがバカンスであり、「どんな人でもたまには空っぽな状態にならないと、疲れちゃうよね。」といったとても人間らしい考え方の元に、バカンスはとても大切に(そして楽しみに)されているものなのです。

さて、イタリアのバカンスと言えば、海。3方を美しい地中海に囲まれたイタリアには、選ぶのも大変!というくらい珠玉のリゾートが数々存在します。シチリアやサルデーニャ、カプリ島などなど。それぞれのお気に入りのビーチリゾートでバカンスを過ごすのが定番ですが、基本的にどこの海に行っても、やることは同じ。それは、「何もしない」ということです。青く透明な地中海を眼前に、日がな一日ボーっと読書をしたり寝たりおしゃべりしたり…。あれこれ予定を詰め込む日本式の旅行とは、対極に位置するこの旅行スタイルは、それはそれは、想像を絶するほどの何もしなさ加減です。徹底的に頭も身体もリセットして、来るべき次の季節に備えるといった趣で、まるで熊の冬眠のよう。

イタリア人が常に元気なわけは、こんな風に休み中は本気で休むからかもしれません。もし、最近疲れ気味であるのなら、こんな本場イタリア流のバカンススタイルで、今年の夏休みは過ごしてみてはいかがでしょう?

ワンポイントイタリア語講座

意味: この夏どこ行くの?

6月の時節のご挨拶。イタリアに数々珠玉のビーチリゾートはありますが、シチリア島の北方に位置する世界遺産でもあるエオリア諸島やさらに南のパンテレリア島など、小さな島に行くのがブーム。また南イタリアのプーリア州やカラブリア州の知られざる穴場の海岸も人気です。