イタリア 万歳

洗濯機は90度、パンツにもアイロンがけ!
時間も手間も体力も使うイタリアの家事事情とは?
(text & photo by 岩田砂和子)

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イタリアの家は、基本的に靴を履いたまま。外を歩いた靴でそのまま家の中を歩くので、床の掃除の仕方は当然日本のそれとはまったく異なります。まず掃除機か箒でざーっと全体を掃除して、その後、除菌効果のある液体洗剤を溶かした水でキュッキュと拭きます。そしてそれが乾くまでは出入り禁止。その一連の流れの前に、床においてあるものは全部どけて、イスはテーブルの上に上げて…となるため、結構な作業です。

掃除機や箒は日本のものとあまり変わりはありませんが、この、キュッキュと拭くための道具には、いわゆるモップタイプから雑巾調の布を置いて、その上をデッキブラシのようなものを使って拭くタイプまでいろいろあり、家庭によってそれぞれ好みが別れるところ。我が家では、簡単なモップタイプを使用してます。また、床の材質によって洗剤も種類が違うため、大理石用、テラコッタ用、パルケ(フローリング)用と部屋によって変えなければなりません。

だいたいこの床掃除作業は週1回程度。玄関で靴を脱いでスリッパになれば、もっと簡単に床掃除が済むのに... と思いますが、まあ、長年家に帰ってスグ靴を脱ぐといった習慣がないと、ついつい脱ぐのが面倒なのか忘れてしまうのか、なかなか定着しないもんです。一度日本の清潔極まりない家を体験したある友達の家では、すっかりスリッパ文化が気に入って、早速イタリアの家でも土足厳禁を取り入れていましたが。

掃除と並んで、気合の入る家事が洗濯&アイロンかけ。洗濯は、白物と色物を完璧に分別する必要があります。混ぜて洗うと白いものはピンクやグレーに…。うっかり混ぜて、何度白いシャツをピンクに染めたことか。イタリアの染め技術が日本と違うから、というわけではなく、水の質と洗濯温度の違いに原因があるのです。白いものは通常は60度で洗いますが、なんと90度まで温度を上げて洗うことも!出来上がりは、ホカホカ…そして、真っ白!90度でガンガン洗えば、トマトやワインのシミも一発です。洗濯機に温度調節機能がついていて、洗濯機自体が水から設定温度に上げて洗うため、高温設定のときは軽く1~2時間以上かかってしまいます。

そして、シーツやテーブルクロスはきっちりとアイロンをかけピシッと美しく。ついでにTシャツやジーンズにまでかける家庭もあります。さすがに我が家ではそこまでやりませんが、伝統的なマンマのいる家庭では、パンツや靴下にまでアイロンをかけるという噂も…。洗濯は家でやるけどアイロンかけはマンマに、と週末ごとに洗い立てシワシワの洗濯物を週末ごとに実家に持ち帰る一人暮らしの男性もいたりするので、こんな噂もあり得ないわけではないのかもしれません。

と、時間も手間もそして体力も使うイタリアの家事の一部ですが、実はこの手の家事はお手伝いさんにお任せ。という家庭も多いもの。何しろ週1回2時間程度で月60ユーロ程(ローマ市内相場)で頼めるので、特別贅沢というわけでもないのです。もちろん、ぜんぶ一人でこなすスーパーマンマもかなりの数います。イタリアには、時間と体力、もしくはお金をかけてでも、徹底的に家庭生活をきちんとしようというスーパーマンマ的女性が多いのです。

ワンポイントイタリア語講座

意味:床掃除した?

「ラヴァート」は動詞「lavare 洗う」の過去形です。「床を洗う」ってなんだか変ですが、イタリアで床掃除は、イコール「洗う」なのです。