イタリア 万歳

アーモンドやドライトマトでも!
“ペスト”で簡単スローライフ
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

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 具材をすり潰してペースト状にしたソースは、イタリア語で「ペスト」。パスタソースにもよく使われます。日本でもよく知られているイタリアの代表的なペストと言えば、「ジェノベーゼ・ソース」でしょうか?イタリア語なら、「ペスト・アッラ・ジェノベーゼ(ジェノバ風ソース)(※)」。バジリコベースのこのソースを「ジェノバ風」と呼ぶのは、それがバジリコの名産地リグーリア州発祥の郷土ソースだから。

 ※バジリコ・ジェノベーゼ(DOP)やヴェッサリコのニンニクなど、伝統食材と製法で作ったものは「ペスト・ジェノベーゼ(ジェノバのソース)」、それ以外は「ペスト・アッラ・ジェノベーゼ(ジェノバ風ソース)」になります。

イタリア政府(農林食糧省)が認める「リグーリア州の伝統食品」にも登録されており、イタリアでの知名度もNo.1。ペストの代名詞のような存在ゆえに、イタリアではざっくり略して「ペスト」と呼ばれていたりもしますが、ペストはジェノバ風のみならず。材料を変えて、さまざまなペストを作ることができます。

例えば、ペペローニとペペロンチーノで、ペスト・アッラ・カラブレーゼ(カラブレーゼ風)。リコッタとクルミで「ペスト・アッラ・シチリアーナ(シチリア風)」などなど。トマト・バジリコ・松の実・リコッタのペストを「シチリア風」と呼ぶ人もいるので、ジェノバ風以外はちょっと「呼んだもの勝ち」みたいなところもありますが、●●地域の特産品で作れば、それは「●●風ペスト」。

また、バジリコをルッコラに変えて「ペスト・ディ・ルッコラ」、ズッキーニで「ペスト・ディ・ズッキーネ」など、「ディ・○○(○○の)」とつなげれば、その数は無限に広がります。オリジナルの組み合わせなら、発案者の名前をつけて、「ペスト・ディ・マンマ・カルメラ(カルメラ母さんのペスト)」などと呼ぶことも。ちなみに、カルメラ母さんは、イタリア某所のトラットリアの伝説のシェフ。トマト・ミント・バジリコ・ニンニク・アーモンド・ペペロンチーノ・ヒマワリオイルの軽い風味のペストです。

お好み素材を組み合わせて作ることができるペストですが、ナッツ類が入ると香ばしさがプラス。松の実のほか、ピスタチオ、ピーナッツ、クルミ…中でもアーモンドは、ニュートラルな風味で他素材との合わせやすさ抜群です。砕く際にある程度の粒感を残しておくと、食感もアップ。パスタのもちもち感とカリカリした歯ごたえが後を引く…新食感のペストが出来上がります。アレンジしやすいベーシックなアーモンドのペスト2種をご紹介します!

●ペスト・アッラ・トラパネーゼ (トラパニ風ペスト)
ジェノベーゼ同様、「シチリア州の伝統食品」にリストアップされているペストのひとつ。

完熟トマト(250g)、バジリコ(50g)、アーモンド(50g)、ニンニク(1片)、ペコリーノ(大さじ1)、黒コショウ・塩(少々)、エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル

【レシピ】
1.トマトを湯剥きする。調味料以外の材料をフードプロセッサーもしくはブレンダーで砕きながらよく混ぜる。チーズは、全体が混ざってから加える。
2. 器に移してから、黒コショウ・塩で味を調え、オリーブオイルを大さじ1杯程度~お好みで加えて、よく和える。

トマトをドライトマトに変替えて(分量は要調整)濃厚風味、チーズがなければ省いてさっぱり風味♪

●ペスト・アッラ・パンテスカ(パンテレリア風ペスト)
パンテレリア島特産の塩漬けケイパーが味の決め手。

完熟トマト(250g)、塩漬けケイパー(大さじ1)、アーモンド(50g)、ニンニク(1片)、バジリコ・イタリアンパセリ(各25g)、乾燥オレガノ(好みで)、赤唐辛子・塩(少々)、エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル

【レシピ】
塩以外の材料をフードプロセッサーまたはブレンダーで砕く。以下同上。 

塩漬けケイパーは、日本ではなかなか入手が難しいかもしれませんので、省く場合は、「ペスト・ディ・ポモドーロ・エルベ・エスティーベ・エ・マンドルラ(夏のハーブとアーモンドとトマトのペスト)」など適当な名前をつけて(笑)!

パスタはもちろんパンに乗せたり、炒め物、和えものに加えたり、場合によっては冷奴まで…活用範囲の広さもペストの魅力。冷凍保存も可能なので、氷皿で小分けしたり、密閉ビニールに薄く伸ばして。使いたいときに使いたい量だけ解凍できるようにしておけば、料理の時間がないときのお助けアイテムにもなります。手作りスローフードの解凍ペストは、イタリア流のインスタントパスタソース。ぜひお試しください!

ワンポイントイタリア語講座

意味:このペストは、どれくらい保存できる?

ガラス瓶に入れ、ペストの表面が空気に触れないようオリーブオイルを足しながら、概ね冷蔵庫で1~2週間。冷凍可能な素材であれば、冷凍保存で1~2か月。冷凍する場合は、オリーブオイル・チーズを少な目にするのがコツです。