イタリア 万歳

伝統ハーブ療法が根付いたイタリア
料理以外で活用されるハーブ効果とは?
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

上
下

イタリアをはじめとするヨーロッパ諸国では、ハーブはもともと薬として扱われてきたもの。中世時代に医療従事者として活躍した修道士たちによって、研究開発されたハーブ療法は今に伝承され、しっかりと人々の暮らしに根付いています。それゆえ、ハーブはとても身近。料理以外にも、日常のさまざまな場面でハーブに出会います。

例えば、リラックス効果のあるカモミール。寝る前の必需品として親しまれ、ティーバックになった商品が、多数のメーカーから出ています。イタリアでは、赤ちゃんや小さな子供にも飲めるお茶としても知られており、スーパーマーケットのお茶・コーヒーや赤ちゃん製品のコーナーで簡単に見つかります。

また、食後によく飲まれる「アマーロ」も、ハーブの効果を利用した商品のひとつ。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、「リモンチェッロ」や「グラッパ」と並んで、確固たる食後酒の位置づけにあるお酒です。その由来は修道院にあり、秘伝のレシピで作る「アマーロ」には、数十種類ものハーブが入っていると言われています。

消化や肝臓の働きを助けるハーブで作ったお酒は、苦くほんのり甘く、飲みなれないと「ウッ」となりがちですが、飲むと飲まないでは翌朝の胃もたれ具合が違う!と実感できるほどに効果的(効果は人によって異なります)。比較的(?)食べ過ぎることの多いイタリアの食生活においては、味わいも含めて、まさに養命酒?の趣です。

これからの季節、夕方から夜にかけてヒンヤリした空気に変わる乾燥したイタリアでは、外のテラスで食事をする機会が多くなりますが、そんな場面でよく目にするのは、シトロネッラの蚊取りろうそく。また、バジリコにも蚊よけ効果があるそうで、窓辺にバジリコの鉢を並べる家庭もあります。食べられる上に便利…。虫よけにもハーブが大活躍です。

イタリア語でハーブティーは、「Tisana (ティサーナ)」。その意味はずばり健康茶です。そのためか、イタリアでハーブティと言えば、採れたてのミントやレモングラスで香りを楽しんでお洒落に…というより、体調不良や体質の改善を目指す本気度が高くなるような気がします。

市販のティーバックタイプのティサーナもありますが、より効果を求めるなら、ハーブ療法士がいるハーブ専門店「エルボリステリア」へ。そこでは、ハーブ療法士が症状や目指す状態に合わせて、各種ハーブを調合し、オリジナルのティサーナを作ってくれます。イタリアには、一般的な薬を扱う「ファルマチア」もありますが、絶対的な病気以外、例えば「なんとなくだるい」「どうも眠れない」など曖昧な体調の不具合には、ハーブに頼るケースも多く、その感覚はなんだか漢方と似ています。

以前、脂っこい食事が続いてどうも胃の辺りが重かったとき、「エルボリステリア」で相談すると、アニス、ペパーミント、フェンネル、マジョラム、メリッサなど9種類のティサーナを調合してくれました。そのティサーナは、飲んで数時間後には胃の辺りがすっきり!お腹も空いてきて…ハーブの力(というか、ハーブ療法士の腕?)に驚きました!西洋タンポポ、ミント、ヒバマタ、ジュニパーベリーなどを調合した「代謝アップ」茶や、バーベナ、ケシ、サクラソウ、オレンジなどを調合した「リラックス・ブレンド」茶などなど、リクエストに応じて調合してくれるティサーナは、暮らしの強い味方です。

あらゆる効果が期待できるハーブ。実は、料理で使うハーブも、味わいにプラスして、魚には、臭みをとる清涼感のあるミントやイタリアン・パセリ。肉には、鮮度を保つローズマリーなど、ハーブの持つ効果を利用した組合せになっています。

イタリアでも、育てるのが簡単で使い勝手の多いバジリコやローズマリー、ミント、イタリアン・パセリ以外は、乾燥ハーブもよく使われています。でも、瓶入りの乾燥ハーブは余ってしまうことも多々。もし、料理用乾燥ハーブの使い方に迷ったら、こんなミックスハーブを作っておくと便利です。

魚用:オレガノ、バジリコ、マジョラム、セージ、ローリエ、イタリアンパセリ、タイム
肉用:ローズマリー、ローリエ、セージ、バジリコ、オレガノ

お肉や魚に、衣代わりにミックスハーブをたっぷりまぶして、オリーブオイル+ニンニクで焼くだけで、イタリアが香るハーブ焼きの出来上がり♪茹でたポテトを、オリーブオイルとこれらのハーブミックスで和えても、イタリアンな一品になりますよ!

ワンポイントイタリア語講座

ケ・エッフェット・ア・クエステルバ?
意味:このハーブは、何に効くの?

ハーブは、erba エルバ。何に効くか知ってから使うと、より効果が表れやすいものです(単純な人の場合)。