イタリア 万歳

美味しいかどうかは慣れ次第?!
食後の気持ち良さに注目してみれば…
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

上
下

スローフードのお国柄、インスタント食品はあまりないかと思いきや、スーパーに行けば、袋入りのリゾットやミネストローネ、瓶詰のパスタソース、フライパンで温めるだけの冷蔵パスタなどなど。意外にも種類豊富なインスタント食品を見つけることができます。ただ、この手のワンステップで完成するタイプのインスタント食品が食卓に上がる割合は、たぶん日本のそれと比べると、だいぶ少ないかもしれません。TVでも盛んに宣伝されてはいますが、「できれば使わないようにしている」なんて話はよく耳にします。

その理由を聞けば、「体に悪そうだから」「美味しくないから」と至極シンプル。遺伝子組み換えの種まで出回っている昨今、果たして何が体に良くて悪いのか。それは正直微妙なところですが、マンマの手料理で育ってきたイタリア人の多くが、「美味しくない」と感じるのは、しみじみよくわかります。加工に加えて保存を効かせるために加えてある「何か」。食べ慣れなれていないとその「何か」をものすごく顕著に感じたりするものだから。

かくいう私も、日本ではコンビニ通いは日課、インスタント上級者。お気に入りのカップラーメンなら夕食でも大満足♪でしたが、素朴なイタリア暮らしをするうちに、じわじわとその経験を舌が忘れ…加工度の高いインスタント食品は、ちょっと舌が痛くなったり、食後にやけに喉の渇きを感じたりするようになったのです。インスタント食品を「美味しく感じる」ためには、ある程度、「慣れ」が重要なんだなぁとここ数年のイタリア暮らしで気づかされた、というわけです。

パスタは、毎日家で手打ちしていた古き良き時代のお年寄りは、「箱入りパスタはインスタントだ」と言います。しかし、今の時代に、毎日手打ちする余裕は、さすがのイタリアにもありません。手作りのトマトソースだって、田舎にご縁がなければ貴重な一品。箱入りパスタや市販のトマトソースは、もはや各家庭の棚に、当たり前のように並んでいます。生活スタイルの変化とともに、そして、加工技術の発展とともに、調理時間の上乗せした加工品が生活圏内に入りこんでくるのは、ある程度は仕方のないことですが、さて、どこまで取り入れるか。

我が家の場合は、舌が痛くならない・食後に胸焼けしない程度のインスタント食品まで許容しています。許容などと言うと、健康にこだわっている風ですが、ただ単純に食後に「美味しかったね」と言いたいだけ。例えば、瓶詰のパスタソースを使うなら、アーリオ・オーリオにするとか、カップラーメンを食べるなら、近所のパン屋のパンにオリーブオイルと天然塩とか…。なんだか地味な方向に傾きますが、「食べた後の気持ちの良さ」に着目するうち、なんとなく決まってきたゆるいルールです。

最近、はまっているのが簡単ポタージュ。時間がないときにしばしばイタリア製のインスタント粉末ポタージュを使っていたのですが(夫が無類のポタージュ好きのため)、インスタントの割にはやけに手間のかかるシロモノ(15分かき回し続けなければならないのです)。これなら素材から作っても、かかる時間は同じかも。と作り始めてからすっかり定番化してしまいました。野菜を適当に切って適当に煮て、ハンドブレンダーでつぶして出来上がり。野菜を食べたという満足感に加えて、食後も気持ちいい(笑)。忙しいときには、特におすすめです。

以来、ハンドブレンダーも活用する場面が増えてきました。二日目のパンを砕いて生パン粉にしてみたり、スムージーを作ってみたり。これも「慣れ」ですね。便利な調理器具に助けられながら、ほどよくインスタント食品とも付き合いつつ。家族の生活スタイルと体調にマッチした、無理のない美味しい食卓を目指したいもんです。

ワンポイントイタリア語講座

バスタ・フルッラーレ・レ・ヴェルドゥーレ・コッテ・コン・ライウート・ディ・フルッラトーレ・アド・インメルシオーネ!

意味:煮た野菜をハンドブレンダーでかき混ぜるだけ!

動詞「かき混ぜる」は、frullare。ハンドブレンダーは、Frullatore ad immersionです。「中に入れてかき混ぜる道具」の意味です。