イタリア 万歳

トリノ生まれのエスプレッソ
歴史&マメ知識と人気メーカー
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

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エスプレッソは、アラビカ豆やロブスタ豆などの深煎り豆を極細に挽いた粉を、「ぎゅうっ」とフィルターに詰めて、高温高圧で一気に抽出したコーヒーのこと。誕生は、さほど遠い昔ではない、1884年。北イタリアのトリノで、アンジェロ・トリオンド氏によって開発特許が取得されたのが始まりです。

その後、エスプレッソを作る機械には改良が加えられ、1901年、ミラノのルイジ・ベッゼラ氏が最新型のマシーンを発表。この特許をパヴォーニ社が買い取り、全国展開のきっかけとなりました。「エスプレッソ」は、イタリア語で「特急の」や「すぐに差し出せる」の意味。時間をかけずに飲めるコーヒーは、時代のニーズに合い、またたく間にイタリア全土に広まっていったのです。今では、どんなに小さい町にもエスプレッソ・マシーンを備えた「バール」があり、バリスタの淹れた美味しいエスプレッソを飲むことができます。

家庭では、家庭用エスプレッソ・マシーンやマッキネッタ(もしくはモカ)と呼ばれるコーヒーメーカーで、朝から晩までカッフェを楽しんでいます。マッキネッタは、日本の家庭における急須のような存在。どんな家庭にも最低一つはある器具です。ちなみにイタリアン・コーヒーは、総称として「カッフェ」と呼ばれ、エスプレッソマシーンで淹れた場合のみ、「エスプレッソ」と呼ばれています。

カッフェは、シアトル系コーヒーのようにバリエーションというよりコーヒー自体の味を楽しむのが醍醐味。お茶の銘柄にこだわるように、イタリア人はコーヒー粉の銘柄にこだわります。たった二口か三口で飲み切れる量だからこそ、至極の一瞬にこだわる。といったところでしょうか。

コーヒーを焙煎販売する店やメーカーを、イタリアでは「トッレファツィオーニ」と呼びますが、その数、なんと700以上もあるそうです。全国展開する有名メーカーから、土地に根付いた小さな自家焙煎メーカーまで、規模もさまざま。さらに各メーカーから、クオリティや風味の異なるブランドが出ていますので、イタリア全土で飲めるコーヒー・ブランドとなったら、もはや星の数。その中からお気に入りの一点を見つけるのは至難の業です。

また、イタリア各地に郷土料理があるように、各地で好まれる風味の傾向も変わるモノ。その土地で愛されるご当地メーカーが、別の地域の人にとっても美味しいとは限りませんので、イタリア人に「どこのメーカーが好き?」と聞いたところで、統一感のある答えはなかなか返ってこないものです。

が、あるサイトにコーヒーメーカーランキングなるものがありました。審査員のプロフィールや対象サンプル数が明示されていないので、あまり参考にはなりませんが(笑)、「へ~こんなブランドもあるんだ」と言う小ネタとしては興味深いので、メーカーの出身地と共にご紹介してみましょう。

1位 Aiello アイエッロ (コゼンツァ)
2位 Passalacqua パッサアクア (ナポリ)
3位 Costadoro コスタドーロ (トリノ)
4位 Illy イリー (トリエステ)
5位 Vergnano ヴェルニャーノ (トリノ)
6位 Saccaria サッカリア (アンコ―ナ)
7位 Pellini ペッリーニ (ヴェローナ)
8位 Mauro マウロ (レッジョ・カラブリア)
9位 Grieco グリエーコ (サレルノ)
10位 Circi チルチ (ローマ)


知ってるブランドや飲んだことのあるブランドはいくつありましたか? このランキングには入っていませんが、ピアチェンツァのMusettiムセッティ、ローマのDanesi ダネージ、ナポリのKimboキンボ、パレルモのMorettinoモレッティーノなども、ご当地ブランドとして知られ、根強い人気を誇っています。

傾向としては北イタリアはまろやかタイプ、南イタリアは強めが好まれると聞いたことがありますが、体験的に賛同します。実際のところ、個人的にはイリー、ヴェルニャーノ、ムセッティをトップにあげたい。サンプル数1(自分)ですが、この結果(?)を見ると「日本人には北イタリアのまろやかタイプが合うのかも」などと、結論付けてみたくもなります。

星の数ほどあり、好みも人それぞれ。誰にも「自分ランキング」があるメーカーの話題は、イタリア人に振ると終わりません。購入時にもめることもしばしば。皆さんは、どこのメーカーがお好きですか?

ワンポイントイタリア語講座

セコンド・テ、クアレ・イル・ミリオーレ・マルカ・ディ・カッフェ・イタリアーノ?

意味:キミにとって一番美味しいイタリアン・カフェのメーカーはどこ?

もしお知り合いにイタリア人がいたら、聞いてみると面白いかもしれません。