イタリア 万歳

ほんわか部屋全体が温まるヒーター暖房
赤ちゃんのいるイタリア家庭を訪ねてみました
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

上
下

イタリアの一般的な家をよく観察すると、ほとんどの家の壁にヒーターが見つかります。主に白が主流ですが、壁と同色に彩色したものや、メタリックなものなど、色はさまざま。カタチもずんぐりしたものもあれば、薄型や細身で背の高いものなどバリエーションがありますが、いずれにしても、あたかも当たり前のようにそこに存在しているため、改めてよく見ないと、その存在に気付かない…といった具合。イタリアでは、それほど普及&利用されているものです。

イタリア語で暖房器具は、Termosiofoneテルモシフォーネ、Riscaldamentoリスカルダメントなどと呼ばれますが、得てして、この壁に設置したヒーターのこと。温水もしくはオイルを循環させるラジエーター式のため、そのままRadiatoreラディアトーレ(ラジエーター)と呼ぶこともあります。

ラジエーター式のヒーターは、温水や加熱したオイルが循環するラジエーター表面から放出される熱を利用した、輻射熱によって部屋全体をじんわりと温めるのが特徴です。音も匂いもなく、なにしろ暖房器具自体が熱々になることがなく安全性が高いので、赤ちゃんやペットのいるお家には最適の暖房法です。

実際に赤ちゃんのいるイタリアのご家庭では、どんな風に使われているでしょう?子育て真っ最中のナディアさんのお家を訪ねてみました。

テラコッタの床に高い天井、温めるのに時間がかかりそうなお宅ですが、入った瞬間に、陽だまりのようなほんわかした暖かさを感じました。オープンスペースになった20㎡ほどの広々したリビング・ダイニングには、対角線上にヒーターが二つ。続く廊下部分にもヒーターがあります。

リビングのヒーター前は、なんと!畳を敷いた赤ちゃんコーナーになっていました。ナディアさんは裸足でしたが、テラコッタの床は、赤ちゃんには少々冷たい…。畳は、厚手のラグとして、赤ちゃんが遊ぶスペースにぴったりです。テラコッタ以外にも、大理石やタイルなど、冷たい床材が多いイタリアで、畳は今、大人気のアイテムなんですよ!

仕事から帰って、畳の上でゼーノ君(7か月)と遊ぶのが癒しのひと時。ヒーターは、「子供がうっかり触っても、火傷の心配がないから安心」と言うナディアさん。7か月のゼーノ君は、肌着+Tシャツ+ニットで重ね着させ、部屋が温まるにしたがって、調節するそうです。

「かかりつけの小児科医の話だと、夜はヒーターを切った方がいいとのことなので、ベッドに入る前に消してます。でも、朝までなんとなく暖かさが保たれているんですよ。」

燃焼系の暖房と違い、点けてすぐに部屋が温まらないヒーター暖房ですが、消した途端に空気がヒンヤリしてしまうこともないのが、魅力。朝まで、部屋全体に柔らかい暖かさが持続します。ただし、「朝のお着替えやおむつ替えのときには、一時的にファンヒーターを点ける」そうです。

ヒーター暖房は、手をかざして暖を取る…といった使い方ではなく、部屋全体を温める時に使い、局所的には、即効性のある暖房を上手に組み合わせて。1日中、寒さにグッと耐える瞬間がほとんどない暖房スタイルは、いかにも我慢が嫌いなイタリアらしい?

点けっ放しでも空気が汚れないので換気も必要なく、風もないので乾燥知らず。密閉性の高いお家向きですが、安全性や健康を考える方、またイタリア人並みに我慢が苦手な方にも、おススメのイタリア式暖房法です。

ワンポイントイタリア語講座

意味:暖房器具、何使ってる?

と、聞いても、返ってくる答えはほぼ一緒ですが…。暖炉のあるお家にも、ラジエーター式ヒーターはあります。ナディアさん宅のように、即効性のある電気ストーブやファンヒーターを短時間併用しながら、「寒さに無理して耐えない」快適な冬の暮らしをしています。