イタリア 万歳

シンプルな調理で素材を美味しく食べるイタリア料理は、
忙しいときの「おうちゴハン」に向いています。
簡単で美味しいを、手抜きに見えない美しい食卓にする
イタリア的秘訣をご紹介。
(text & photo by 岩田デノーラ砂和子)

上
下

イタリアの食卓と言えば、お料理好きなマンマが手間ヒマかけた料理を大量に作り、家族にふるまう…そんなイメージがあるかもしれませんが、働くマンマが増えた昨今、スローな食卓はイタリアでも憧れ。忙しい毎日の中で、かつての伝統を踏襲するのはところ変わっても難しいものです。

だからと言って外食の回数が増えるのか、と言えばそうでもないのは、さすがイタリア。暮らしの基本は相も変わらず「おうちゴハン」です。作った人の顔が見える食卓の安心感は、マンマに大切に育てられた人ほど忘れがたく、家族でテーブルを囲む幸せを求める貪欲さは、DNAに刻み込まれているかのようです。

コンビニもなく、インスタント食品の数もとても少ないイタリアでは、「おうちゴハン」と言ったら素材から作るしかありませんが、イタリア料理には、素材の味を生かしたシンプルな調理法の料理が多いのはご存じの通り。また最近は、ますます素材の味わいを楽しむ傾向にあるため、満足のできる素材を用意しておけば、あとは簡単。決定的な失敗を犯さない限り、時間をやりくりする必要もなく、美味しい「おうちゴハン」が実現するので意外と楽ちんだったりします。

また、そんな調理のシンプル傾向に加えて、昨今のイタリアは、ダイエットブームもあってメニューの数もシンプル傾向。イタリア料理の構成は、アンティパスト(前菜)、プリモ(パスタやリゾットなど)、セコンド(メイン)、コントルノ(セコンドに添える野菜料理)そしてドルチェ(デザート)となりますが、プリモを食べ終わった後に、いちいちセコンドを用意する…などと悠長かつ面倒なシステムを実践するのは、よほどトラディッショナルな家庭か特別な日くらいで、毎日の食卓では、ランチならプリモだけ、夕食なら前菜とプリモ、セコンドとコントルノ、もしくは、前菜とパンといった具合に、どれか1品ないしは2品程度なのが一般的です。

テーブルには、一汁三菜を並べないとどうしても恰好がつかない和食と比べたら、用意するメニューの数が少ないイタリアの「おうちゴハン」は、はるかに手間がかからないのです。

ただし、メニューの数が少なくても、テーブルにポンッと一皿おいて終わり。なんてことは、美的感覚の優れたイタリアの家庭では許されません。イタリア料理の「おうちゴハン」を美しく楽しむために、日本の家庭でもできるイタリアの日常的習慣をご紹介しましょう。

イタリアの食卓に必ず用意されるものは、テーブルクロスかピッコラ・トヴァリア(ランチョンマット)、ワイングラスとお水用のグラス、カトラリー、トヴァリオーロ(紙ナプキン)、そしてパン。品数は少ないですが、テーブルアイテムは多いのです。パンは日本の食習慣に合わないのでなくてもいいかと思いますが(イタリアではパスタのときでもパンは用意)、ここで大事なのは、クロスや食器の色や形を料理と合わせるということ。ワインとのマリアージュを楽しむように、クロスや食器を選びます。

食卓を飾るのは、料理のみにあらず。料理の色や形と合わせて、食卓のトータルバランスを考えて、雰囲気も同時にコーディネートして楽しもうというのは、いかにもイタリア的な発想です。そしてできれば暗めのライティング。柔らかい明りの食卓は、料理もより美しく見えるし、気持ちも和ませてくれます。

忙しい時間をやりくりして頑張って作らなくてもいい簡単で美味しく、そして美しい「イタリア的おうちゴハン」。特に時間のないときにおススメです。

ワンポイントイタリア語講座

意味:今晩何にする?

毎日交わされるフレーズのひとつ。メニューを決めるところから、家族で会話するのも「おうちゴハン」を楽しむ秘訣かもしれません。