イタリア 万歳

イタリアも日本と同じ火山国。
ゆえに至るところに温泉が湧き出ていますが…。
(text & photo by 岩田砂和子)

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立春とはいえ、まだまだ寒い日が続いていますね。雪がちらほら舞い散る雪見の露天風呂にでも出かけたい気分になります。イタリアも、日本と同じ火山国。全土に湧き出る温泉は、なんと2000を越えると言われます。結構ありますよね。しかし、そんなに温泉があるにもかかわらず、冬のポピュラーなお楽しみというわけではないんですよ。残念ながら 。

それは、そもそもお湯に使ってしみじみする。そんなステキな習慣がないこともありますが(ローマ時代にはあったのに!)、温泉は主に病気の治癒に行くものというイメージがあるからかもしれません。日本でも美肌効果や冷え性改善、リウマチ治癒など、その効果を掲げる温泉が数々ありますが、イタリアはもっと具体的。皮膚病や喘息、そして結石にまで効くと謡われる名湯がいくつもあり、その多くは、数百年前に診療所としてオープンし、今も尚、専属のドクターが常駐する温泉療養施設として存在しています。そんな温泉では保険も効くんですよ 。

例えば、ローマの近郊にある「Fiuggiフィウッジ温泉」。ここは、紀元前に発見され、中世時代にはローマ法王に献上されていたという伝統の温泉が湧いています。イタリア中のスーパーでもボトル入りになって売られる程有名な温泉ですが、飲むと腎臓中の結石を溶かして排出する効果があるそうで、ご当地では専属ドクターの指示のもと、日に何度も温泉水を飲む飲泉治療が受けられます。温泉とはいえ入浴場はなく、施設内には数種類の濃度の異なる温泉水が出る蛇口が並んでいるだけ。「なんだ、飲むだけか!」とガックリきますが、ツーリストでも飲むことはできるので、ものは試しと飲んでみたことがあります。施設の方によれば、何日も滞在して飲み続けなければ効果がないそうですが、いやはや出るわ出るわ…。1回のお試し飲泉でも、ローマ法王御用達のお墨付き、霊験新たかな温泉水の効果を体験することが出来ました。ボトルものも効き目は現地の新鮮な(?)温泉水程ではないですが、それなりに効くのでむくんだなーという時お世話になっています 。

また、これもローマ近郊ですが「Vitervoヴィテルボ」という街には、「テルメ・ディ・パーピ」(法王たちの温泉)があります。こちらも歴史は古く、気管や皮膚の病に効く温泉として、法王たちが足しげく治療に訪れたことが、その名の由来になっています。同名のホテルでは、エステもできるし、温泉プールもありました。皮膚病に効く=美肌?と安直に解釈して入ってみましたが、ツルツルというよりはカサカサに。聞けば皮膚を洗浄する効果があるそうで、必要な肌成分も取れちゃったのかもしれません。トスカーナ州にある「サトゥルニア温泉」は同名のコスメも売り出される程美肌に効く有名な硫黄泉。こちらでは、濃ければ濃いほどいいだろうと源泉の川に入ってみたら、肌も髪もツルツルになったかわり、ヒドイ湯あたりと硫黄臭さで3、4日、ツライ思いをしました。やはり効能で有名な温泉では、きちんとドクターの指示を仰ぐのが無難なようです。

ほか、海底から温泉が湧き出すシチリアのVulcanoブルカーノ島や、ボローニャの先にある秘湯Bagno di Romagnaバーニョ・ディ・ロマーニャなども行ってみましたが、水着で入るからかぬるめだからか、今ひとつ「極楽極楽♪」気分にはなれなかった…。かの有名なイスキアの巨大温泉プールは、レジャー施設としても立派なものなので、なかなか楽しいですが、地中海の青い海を楽しむついでに行く方がお似合いで、いかんせん、「温泉」のキーワードからイメージする風情が違う。洞窟スパやファンゴエステなど、ヨーロッパの温泉らしい風情は優雅ですがね 。

イタリアの温泉は、治療や楽しい夏のレジャースポットゆえ、真冬に話題になることはないですが、日本の温泉宿のしっとりとした風情に裸で身をまかせる…来日し、あの癒しを一度体験してしまったイタリア人は、「温泉行きたいね~」などと口走ることもあります(笑)。日本の温泉文化は最高。と、遠いイタリアにて思ふ。DNAでしょうかね。あ~日本の温泉に入りたい!

ワンポイントイタリア語講座

意味:お風呂入るね。

docciaドッチャはシャワーの意味です。バスタブにお湯をはる習慣があまり根付いていないイタリアでは、「シャワーを浴びる」が日本で言うところの「お風呂に入る」になります。バスタブは、Vasca da bagnoバスカ・ダ・バーニョ。そのまま訳すと「濡れるための桶」。なんとなく、お風呂場で市民権がなさそうな名前です。