イタリア 万歳

冷蔵庫を覗いて…何もない?!
そんなときに食べるパスタ料理の代表
(text & photo by 岩田砂和子)

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ナターレ&カポダンノ(クリスマス&お正月)のビッグイベントを終えた、この時期の胃腸はグッタリ。伝統的なナターレとカポダンノの食事は、「チェノーネ Cenone」と呼ばれますが、それはディナーの意味の「チェーナcena」に、「大きい」の意味になる-oneをつけた言葉。つまり、「大きい夕食」=壮大な夕食を意味します。名称だけでもお腹一杯なイメージが浮かびますが、実際のところ、ええ、それはそれはもう!どちらのチェノーネ後も、下を向くのがつらくなるほどです。

山のようなご馳走をたらふく食べる年末年始が終われば、「増加した体重どうする?」といったテーマのダイエット情報が氾濫するのはいずこも同じ。だけど、「チェノーネで疲れた胃腸に優しい食事」なんて話題はあまり出ません。イタリア人は胃腸が丈夫だな~とたいてい年中感じていますが、この時期はひとしお。忘年会・新年会と続き、おせち料理で疲れた胃を休める日本のお正月後の「七草粥」は、本当に繊細な日本らしい文化だなと思います。

胃腸疲れ知らずのイタリア人の食卓で、最もさっぱりした料理と言えば、かの有名な「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」があります。オリーブオイルたっぷり、ニンニクたっぷり、唐辛子たっぷり… そしてパスタもたっぷり。七草粥文化のある日本から見たら、まったくさっぱりしていませんが、イタリア料理の中では群を抜いてさっぱり。地味な料理の代表です。それだけに、「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」は、リストランテやトラットリアではほとんど見つからないって知っていましたか?

オリーブオイルとニンニクと唐辛子は、冷蔵庫を開けて「あら!何もないわっ!」と言った危機的な状況のときでも必ずあるもの。イタリアの家庭なら必ず常備されている基本食材です。パスタはもちろん、言わずもがな。「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」は、そんな食材たちを組み合わせて作る超!がつく程のシンプル料理なわけで、しいて言えば「お茶漬け」のようなものでしょうか。お茶漬け専門店や日本料理店で出されるような、梅干の産地や鮭の焼き方、お米のたき方や出汁にこだわったお茶漬けではなく、余ったゴハンにお茶をかけてお新香でさらさらっといただく、時代劇に出てきそうなお茶漬け。

リストランテやトラットリアでも、オリーブオイルはノヴェッロ、唐辛子はカラブリア産、パスタは手打ち。なんて、こだわった「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」があっても良さそうですが、そんなにこだわらなくてもそれなりに美味しかったりするので、こだわりがいがないかもしれません。こだわりとしては、ニンニクと唐辛子を焦がさないように弱火で調理すること、パスタは固めのアルデンテ、オリーブオイルはたっぷり過ぎる位にたっぷり使うこと。それはいわゆる、イタリア料理の基本。

キリストの神々しい光り輝くこの夜に、私たちの心を解き放ち、愛と共に祝いましょう。メリークリスマス。

「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」に、ツナとコショウを加えたり、トマトやバジリコを加えたりすれば、リストランテやトラットリアでも見かける立派なパスタ料理にもなります。・・・ということは、「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」がベースになっているパスタ料理って、つまるところ、具材にこだわったお茶漬けなのかも?!などと、新年早々どうでもいいことに気づいてしまいました。今年もこの調子(?)で、イタリアのいろいろを綴っていきます。どうぞ変わらぬご愛顧の程、よろしくお願い致します!

ワンポイントイタリア語講座

意味: 冷蔵庫に何がある?

冷蔵庫はフリーゴ。冷やす、冷却するの意味がある形容詞「フリゴリフェロfrigorifero」も冷蔵庫の意味で使います。冷凍庫は、「コンジェラトーレcongelatore」と呼びます。「コンジェラーレcongelare」で冷凍するの意味。冷凍する器械で、コンジェラトーレ。語尾のジェラーレ gelareには、「凍らせる」の意味があります。ジェラートはこのジェラーレからきています。こんな風につながりを意識するとイタリア語を覚えるコツになります。