イタリア 万歳

朝晩が冷え込んでも、昼間は暑いこの季節
季節感より「心地いい」が服選びの基準です
(text & photo by 岩田砂和子)

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空は青く澄み渡り(ローマは1年中青く澄み渡っていますが)、空気も乾燥し(イタリアはやっぱり年中乾燥していますが、 秋冬の乾燥はより厳しい)、爽やかな秋がやってきました。まさに天高く馬肥ゆる秋、そんな感じです。 街もすっかり秋の装い…と思いきや、これが実にバラバラ!早くもダウンコートにブーツの人がいるかと思えば、 夏の名残のままTシャツにビーチサンダルの人もいる。

四季のあるイタリアには、当然、季節の変わり目が4回ありますが、特に冬→夏、夏→冬、 つまり夏服と冬服の入れ替え時期、春と秋には季節感バラバラの人々が街に入り乱れます。 イタリアには、私の知っている限り「衣替え」なるものがなく、10月1日から一斉に制服が夏服から冬服に入れ替わって、 しみじみ秋だねぇなどと感じることはありません。夏服⇔冬服の入れ替え時期はその年の天候と自分の体感温度が基準。 日付よりも自分が心地良いかどうかに左右されるため、街にはいろいろな服装の人が現れるわけです。

日本では、なんだかんだといっても10月に入ってもまだ、麻素材の服や素足にサンダルでいれば、 「季節感がない」とちょっぴり白い目で見られそうで、ポカポカ陽気でも多少足先を蒸らしながらブーツを履いたり、 背中にびっしょり汗をかきながらフランネルのジャケットを着たり…ちょっと無理することもありますが、 「無理しない」がコンセプトのイタリアでは、 モードを追う人以外なら、自分の体調に合わせた好き勝手な格好で問題なし(笑)。

朝夕と昼間、日陰と日向、1日の中でも寒暖の差が非常に大きくなる今の季節。地中海の太陽は、秋になってもまだまだ元気で、朝夕と昼間の気温差が10度以上は当たり前、たまに20度近く差が出ることもあります。日陰温度&朝夕に合わせれば相当な防寒が必要ですが、昼間の日向温度に合わせれば、キャミソールでもまだいける。ちなみに、2008年10月14日のローマは最高気温25度、最低気温なんと12度!アナタなら、どんな格好で出かけますか?! 皮ジャケットの下はTシャツだけど、昼間、小脇に抱えたジャケットが暑くて腕に大汗かく…ああ。そんなわけで、1日の中での洋服の調整が難しく、「秋だね~」などと言って唐突に衣替えできないのも致し方ないんですよね。

「昼間暑かったから薄着して出かけたら夕方から冷え込んで風邪引いた」とか、「今朝、厚着して出かけたから昼間暑くて汗かいて風邪引いた」など、天候による体調不良の声をよく聞くのもこの季節。イタリア人にはこの「思わず寒い思いをする」ことを、ものすごく嫌う人が多いようで、ちょっと冷たい風が吹けば「風邪引いた」「体調崩した」「骨が痛い」「背中が痛い」とことのほか体調が悪くなる人が続出します(笑)。中部イタリアにあるローマでさえ、緯度は北海道並と高いのに、地中海気候のせいで確かに年間通して温暖ですからね、基本的に寒がりな人が多いのかもしれません。

気温が40度近くになる真夏には裸同然の格好でも、朝晩、少しでも涼しくなってくると皮のコートやダウンでがっちりガード。冬のお洒落先取りというよりも、朝晩の冷え込み&日陰が恐怖だから!太陽の下では皮コートを脱いで半袖Tシャツになる人も多いので、服装が入り乱れてよくわかりませんが、この季節、朝晩薄着の人がいたら、きっとイタリア人ではないはず。巷では「北ヨーロッパからの旅行者かドイツ人」と言われます。(イタリア人から見ると)ドイツ人は寒さに強いようで、真冬でも半袖なんですよね…なんででしょう?

ワンポイントイタリア語講座

意味:冷えた!

ただ「寒いね!」などと言うときは、「Fa freddo!(ファ・フレッド)」ですが、 「冷えた」と言うときは、このように「寒さを体に受けた」となります。 早朝、寒空の中学校や会社に出かける子供やパートナーに「Non prendere freddo (ノン・プレンデレ・フレッド)」と言って マフラーをかけてあげたりします。「冷やさないでね」といった感じ。