イタリア 万歳

身近な人ともっと褒めあえば、毎日がもっと楽しい?!
褒め上手なイタリア人男性に学ぶ褒め美学とは?
(text & photo by 岩田砂和子)

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テクテクと歩いていると、通りすがりの見知らぬ人が「ヒュ~」と口笛交じりに「Complimenti!(コンプリメンティ!)」(「お見事!」褒め言葉の代表句)なんて聞こえるようにつぶやいてみたり、工事中のおじさんが「こんなキレイな女性は見たことない!」とわざわざ仕事の手を止めて、工事中の道を通るのにエスコートしてくれたり。そんなことが日常茶飯事のお国柄もどうかと思いますが、褒められていやな気がする人は世界広しと言えどもいないでしょうから、よしとしたいところ。

世界にその名を知られるモテ男イタリア人男性だけに、こうやって日々声かけ訓練でもしているのでしょうか。いえいえ、これは単なる楽しい習慣。いいものや美しいものを見たら口に出して賞賛するという、まったくもって日本人男性にも見習ってほしいステキな習慣のために、つい声をかけてしまうだけだと思われます。だって、「ねぇねぇ、どこ行くの?」としつこく付きまとわれることが意外にも少ないし(私の魅力には関係なく)。

だから、褒め言葉をかけられたら、「あら、どーも」とさらりと立ち去るのが美しく、いちいち「きゃ~声かけられた~」とか「ナンパされたー」などと大げさに取り立てるのは、イタリア的褒め美学に少々反します。習慣も突き詰めれば、そこにあるのは様式美。褒める褒められるにも美しい流儀があるのです。

街を歩くすべての女性たちに優しいイタリア男性ですが、身近になると褒め言葉はより具体性を帯びてきます。「今日のセーターの色は似合ってるね。」「個性的な指輪してるね。」と身に着けている物から、「おや、今日の眉毛の形はいいね。」とか「毛先のはね方がカワイイ。」などなど。どこか必ずいいところを見つけててくれる観察力には、まったく恐れ入るばかり。

そして、イタリア人男性の褒め方が「うまいな~」と思わせるのは、決して「肌のつやがいいねえ。昨日、何かいいことあったの?」とか「今日は決めてるねえ。デート?」などと、プライベートに入り込んだコメントを加えないところ。見たままそのままを単純にさらりと褒めるところに褒めの美学があります。これは、腹の立つセクハラとうれしい褒め言葉との大きな境い目ともなりましょう。褒め美学の高さとモテる度合いは正比例します。

久々に日本に帰ってくると、なんかパーッとした気持ちにならないな~ということがたまにあるんですが、そんなとき「あ、そうだ。最近誰にも褒められてない!」とはっ!としたりします。女性は喜ばせてなんぼ。そんなサービス精神が街を楽しげに彩るイタリアは、歩くだけでもなんだか楽しい気分になります。はっと目を引く美しさがなくとも、どこか必ずさらりと気前よく褒めてくれるサービス精神には、私の方が「Complimenti!」と褒めたいほどだな。

ワンポイントイタリア語講座

意味:わぁスゴーイ! お見事!など祝辞、賛辞として使います。

EX: Sei bravo! Complimenti! (セイ・ブラーヴォ!コンプリメンティ!)
「あなた、すごいわね。お見事!」何か素敵なことをしたときにこんな風に褒めます。美味しい料理を作った人や、すばらしい演奏を聞かせてくれた人などに。さまざまな場面で使える便利な言葉。