イタリア 万歳

痩せたカラダより、ハリのある健康的な
ボディの方が、イタリアの海には似合う?!
(text & photo by 岩田砂和子)

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夏と言えばバカンス。イタリアでバカンスと言えば、もちろん海。当然、水着姿になるわけで、「格好よく水着を着こなすためにダイエット!」といった話題でもちきりになる…のは4月や5月。 6月に入れば、すでにバカンス第一陣が出発済み。7月にはもうこんがり焼けた自慢のテラコッタ肌を露出させる人が街にあふれます。日本の海開きの頃には、もはやドタバタしてももう遅く、話題の中心は美しく日焼けを保つためにはどうしたらいいか。「イタリア人はスタイルがいいから、体型を気にすることもないのかも?」なんて思ったら大間違いで、実は、イタリアでは国民の肥満度がかなり問題視されていたりもするのです。

ある発表によると、ヨーロッパでは人口の15%が肥満、イタリアではだいたい10人に1人の割合になるそう。また、近年の増加率が急激で、このまま行くと、2236年にはイタリア人全員が肥満になる計算なんだそうです。 200年後まで視野に入っているとは、さすが!と感心している場合ではないですよね。美味しいマンマの手料理はついつい食べ過ぎる…イタリア人にとって、ダイエットはなかなか難しいお題かもしれません。

一方、2年前に、ファッションショーのモデルが痩せすぎていることが、若い女性たちの過激ダイエットを助長することになりかねないと、出演するモデルのBMI値(肥満度指数)が18以下の場合、出演禁止となったことがありました。年齢を重ねると、無謀な夢は見なくなり、かつ健康第一になってきますので、過激なダイエットに走ることはままなくなってきますが、若いうちはついつい健康を害するまでのダイエットをしてしまうのは、いずこも同じ。美しくファッションを着こなすことと、健康的で美しいことは別だと再認識させるニュースでした。

私の周りにいる30代、40代の女性たちは、「ダイエットしなくちゃ」と口々に言いつつも、どうも真剣さに欠けています(笑)。ビスケットの代わりにカロリーの少ないお米のガレットにしたり、野菜を多目に摂ったり、サラミは食べずにプロシュートにしたり(脂肪分が少ないためですが、ちょっと微妙な努力?)、夕食にパスタは食べないなど、なんとなく努力はしているものの、美味しいものを目の前にあえて拒否するなんて光景はついぞ見たことがありません。むしろ、よく食べよく動くというようにしている様子。ジムやヨガに通ったり、早朝走ったり、楽しそうに体作りをしています。

彼女たちが最も気にすることは、もはや体重や体脂肪率ではなく、重力に逆らえなくなった脂肪の行方とセルライト。食べたカロリーを吸収するサプリメントといったものもありますが、よく見聞きするのは、セルライトケアのグッズや代謝をよくしたり体調を整えてくれるハーブティー。そして、日本ではあまり話題にも上らないバストケアでしょうか。胸を増したり、お尻を上げたりする美容整形も盛んです。「ボリューム」のある健康的でハリのあるカラダが、ゴージャスでセクシー。地中海の強烈な太陽が降り注ぐ砂浜には、存在感のあるボディの方がしっくりきますしね。

ところで、件のBMI値は世界共通の指数。18.5以下が痩せすぎ、18.5~24.9が普通、25以上が肥満となります。私は今のところ問題なしの 21。肥満度が世界でも最も低いといわれる日本に帰ると、周りと比べてちょっと太り気味かも?と危機感に襲われてしまいますが、イタリアに戻るとホッとします。多少はみ出し気味のわき腹もむしろ「肉感的でセクシー」な扱いに変わりますので…。

ワンポイントイタリア語講座

意味:アナタ、痩せてるわね。

痩せているカラダを表現するのには、「magra」マグラ(脂肪の少ない)、「secca」セッカ(瑞々しさがない)などがあります。一方、太っているという表現には、「grasso」グラッソ(体脂肪率の多そうな)、「cicciaチッチャ」(ぽっちゃりした)などがあります。※()内はすべて意訳。チッチャなんて発音がちょっとかわいくて、褒められたような気にさせられるのが困りものです。