イタリア 万歳

イタリア人って同じ名前が多い?
日本人ほどこだわらない名前の秘密
(text & photo by 岩田砂和子)

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イタリアで初めて会った人に自己紹介をすると、よく「アナタの名前はどんな意味があるの?」と聞かれます。日本人の名前は、イタリア人にとっては聞きなれないものが多いため覚える手がかりにするつもりなのか、はたまた、漢字に興味津々なのか。漢字の名前の場合、たとえ名付け親の意図を知らなくても意味が説明がしやすいもの。例えば「美」なら「Bella(美しい)」だから「心の美しい子に育つようにと願いが…」。とか、「和」なら「Armonia(調和)」だから「ハーモニーをもたらす子供に」。などと、名前を題材にして会話をはずませるのもお手のもの。

では、イタリア人に「じゃあ、あなたの名前の意味は?」と聞くと、たいてい「特にない」。ガクッときます。イタリア人の名前は、一般的に聖人や神話、歴代皇帝、歴代法王を由来とします。もちろん工夫を凝らした意味ある名前の方もたま~にいますが、ほとんどが、アレキサンダー大王のアレッサンドロ(イタリア語読みだとこうなります)、聖人フランチェスコ、キリストのお母さんマリアなどなど。しかも、そこには「ジュリオ・チェーザレ(ユリウス・シーザーのイタリア語読み)のようになって欲しいから」。と願いが込められているわけでもなく、単なる象徴だそうです。

一般的によく使われる名前のバリエーションが少ないので、友人間で名前が「かぶる」こともしょっちゅう。あの人もクラウディオだけど、彼もクラウディオ。携帯に名前だけ入れておくと、着信時にどのクラウディオからかかってきたか不明。ということがよく起こります(笑)。もちろんかけるときも「どれだったっけ?」となるんで、苗字か特徴を入れておかないと大変です。伝統的に祖父母や親戚から名前を受け継ぐ習慣もあり、家族内に同じ名前の人が何人もいるなんてことも珍しくありません。同じ名前の人同士が、仲良く呼び合ってるのは、…なんとも不思議な光景です。

男性の名前は、最後の母音が「O」、女性の名前は「A」で終わるルールになっているのも特徴のひとつ。シルヴィオ(男)シルヴィア(女)、フェデリコ(男)フェデリカ(女)などがあります。カップルで「パオロとパオラよ」。な~んて、まるで「漫才コンビ?」のような偶然もあり、ついつい笑ってしまうんですけど、イタリア人にとってはぜんぜん面白くないので、あえて説明はしません(失礼だし)。一方、日本人の女性の名前で多い、「○○子」なんかは、「O」で終わるのがイタリア人にとってはちょっと違和感があるらしく、私は「サワコ」なんですが、たまに勝手に「サワカ」と呼ばれることもあります。

また、名前に「地方性」があるのも面白いことのひとつ。特に南イタリアが顕著で、「サルバトーレ」はたいていシチリア島出身だったり、「チーロ」「パスクアーレ」なんていったら、もう絶対ナポリ出身!私のいるローマには、「アレッサンドロ」「フランチェスコ」がやたらにいます。

そんな名前に個性のないイタリアですが、日常の暮らしでは、苗字よりもファーストネームがメイン。自己紹介のときも名前だけを紹介します。それがたとえ目上の人であっても。「さん」をつけない、いわゆる「敬称略」になるので、最初は少々抵抗がありますが、親しさが湧いてスグに仲良くなれるのはいいところです。呼び捨てにして名前を呼び合うと、どうしたって率直な感じになって、遠慮がしにくくなりますよね。でも…いくら家族と言ったって、お姑さんを呼び捨てにするのは、なかなか難しいもんですが…(苦笑)。

ワンポイントイタリア語講座

意味:○○です。ヨロシク!

自己紹介の定番フレーズ。日常では、「ミ・キアーモ(私の名前は)」の部分は省いて、「○○!」だけでも。ただし、名前を言いながら、握手のために手を差し出すのをお忘れなく。