イタリア 万歳

言葉を省略するのはイタリアでも?
短縮アルファベットで携帯メール
(text & photo by 岩田砂和子)

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携帯電話でのメールのやりとりは、イタリアでも日常的。年代の差は日本同様ありますが、メールを打つより電話した方が早いと思う世代は、 1日に数回程度のやりとりかと思いますが、若い世代になると、もう手から携帯が離れるときがない程、頻繁にメールを交わしています。

しかし、イタリアの携帯にはE-mail機能があるものが少なく、文字だけ交換するいわゆるSMS(ショートメッセージ)がスタンダード。楽しいデコメールや絵文字など気持ちを表現するツールもないので、徹底的に「言葉」で気持ちを交わさなければなりません。そうなると、一つ一つの「ワード」をキチンと打っていると時間も手間もかかるため、略したくなるのが人情ってもので、携帯メール用の略語がいろいろあるわけです。

ところで、略語と言えば、KY(空気読めない)などというアルファベットの略語が、昨今の日本では流行中のようですが、その手の略語は、2000年前のローマ時代にもあったのをご存知ですか?有名なものは、ローマ帝国の「SPQR」。ラテン語の「Senatus Populus Que Romanus(セナトゥス・ポピュリュス・クエ・ルマヌス)」の略で、意味は、民主政治を目指す帝国の主権者たる市民たちよ、聞いてくれ。といったところ。演説の前置きに呼びかけの言葉として使われていたそうですが、この略語「SPQR」は、ローマ市の広報物やマンホールの蓋などにプリントされたり彫られたりして、今のローマでも使われています。 2000年の時を越えた略語。略語文化は侮れません。…「KY」も、もしかしたらこの先もずっと残るかも?

さて、巷で使われている携帯メール用の略語のお話に戻しましょう。どんな略語を使うかと言うと・・・いくつかのパターンに分けられます。

ひとつは、「音」で省略する場合。イタリア語のアルファベットには、J、K、W、X、Yがありません。外来語以外は、通常、この5文字を抜かした21文字のアルファベットで構成されます。最近は、この本来はない文字を使って略語にします。例えば、よく使われる「Che(ケと発音 意味はWhat)」は、メールでは「Ke」。Perche(ペルケと発音 意味はWhy)は、「XKe」になります。また、よく使われる単語を短くする場合。「Comunque (コムンクエ とにかく)」=「Cmq」、「Mattina(マッティーナ 朝)」=「Matt」など。「Non」も、「Nn」になります。

そして、文法的に省略できる場合。例えば、「Ci vediamo(チ ヴェディアーモ またね)」は、「C ved」。イタリア語の動詞は主語に伴って必ず語尾変化するため、主語が1人称複数のCiなら、動詞のVedereは必ずVediamoになり、 2人称複数Viなら、Vedeteといった具合になります。なので、主語がわかれば改めて動詞の語尾変化をつけなくてもいいだろう。というわけで、Ciがきたら、後ろの‘-iamo’をとっちゃうんですね。動詞の語尾変化を覚えるのがとても大変なイタリア語だけに、これはまったく新しい潮流!

:よく使われる携帯メール会話:

Che fai di bello? → Ke fai d bel? (何してるの?)

Dove sei?→ Dove 6? (どこにいるの?)

Ci vediamo domani.→ C ved doma. (明日ねー)

イタリアで正しい日本語を勉強したイタリア人が日本に行って、 「日常の日本語は、教科書で習った言葉と全然違っていて、さっぱりわからなかった…」。 と言っていましたが、イタリア語もしかり。略語携帯メール花盛りのイタリア。これからイタリア語を習う方には必須科目かも?

ワンポイントイタリア語講座

意味:好き

イタリアの有名な愛情表現のひとつ「Ti voglio bene」(ティ・ヴォリオ・ベーネ)の伝統的略語。「アナタにいいことがあるといいと思ってる」の意味で、恋愛感情より、もっと博愛な友愛的な表現で、よく使われるフレーズのひとつ。もうワンランク上(?)の表現で「TVTB」(Ti voglio tanto bene)もあります。「Tanto(タント)」は「たくさん」です。