イタリア 万歳

セージは歯を白くする? 赤ワインは塩で?
おばあちゃんの知恵は深い!
(text & photo by 岩田砂和子)

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イタリアのお母さんは「マンマMamma」。この呼び名は日本でも認知度が高く、イタリアのことをよく知らない人にでも、「愛情たっぷりのイタリア家庭」を想像させるキーワードのようで、「マンマの家庭料理教室」なんて名前がついたレッスンは、人気があると聞きます。しかし、イタリアにおける家庭愛も家庭料理も代々受け継がれてきたもの。名高い「イタリアンのマンマ」ですが、このマンマに愛情をたっぷりそそいできたのは、「ノンナNonna」。そう、おばあちゃん。ノンナの存在を忘れてはいけません。

美味しいトラットリアや有名シェフでも、「影響を受けたのはおばあちゃん」と言うケースも多く、イタリアではその料理、その愛情において、おばあちゃんの存在は絶大。そして、毎日の暮らしの中にも「おばあちゃんから教わった」といったものがたくさんでてきます。それは、「風邪をひいたら、喉に葱を巻く」的な庶民的な発想で、身近にあるものを役立つものに変える小さな知恵。
例えば、
「歯を白くしたいときは、セージの歯で磨く」
「赤ワインの染みは、まず塩もみしてから洗う」
「玉ネギを刻むときは、スプーンを口にくわえると涙が出ない」
「胃が痛いときは、重曹を水に溶かして飲む」
「タコはワインのコルクと煮込むと柔らかくなる」などなど。

中でも、私が一番驚いたのは、「ものもらいができたら、レモン汁を目にさす」。レモン汁は、口に入れても酸っぱいのに、それを、何より敏感な目に?!「まあ、だまされたと思ってやってごらん」。恐怖におののきながらも説得された私は試しました。と言っても、自分でレモンを目の上で絞る勇気がありませんでしたので、「絶対大丈夫だから。」と言う友人に入れてもらいましたが。

レモン汁が目に入った瞬間、「ぎゃ~!」という絶叫が近隣に響き渡ったのは言うまでもありません。耳の奥で「ドーン」と衝撃音が聞こえる程に痛かった…。それから1分位は目を開けられませんでしたが、開いてみると真っ赤(当たり前です)。しかし、なんと翌日には、ポッテリと腫れていた瞼が普通サイズに戻っているではないですか!(白目部分もちゃんと白く戻っていました。ホッ)。聞いてみると、「ああ、そうそう。おばあちゃんがそうしてた。」と言う人も多く、小さな子供でも知っていたのには、また驚かされました。

おばあちゃんの知恵は、科学的な検証はないけど、長い間の経験則が証明している事実。愛情たっぷりに子供たちに教えることで、間違ったことなんてあるはずない、と信じるイタリア人と過ごしていると、21世紀の世界の最新科学もなんのその。大丈夫、私たちは今のままでも十分幸せに生きていける...なんて力強く感じてしまうので不思議です。

ところで、私の小さな知恵ですが、「おばあちゃん子に悪い人はいない」。男性をみるときに使えますよ。これも、経験則。お試し下さいませ。

ワンポイントイタリア語講座

意味: ものもらいが、痛い。

「ものもらい」は医学名は「麦粒種」。イタリア語のオルザイオーロの語幹、オルゾは麦。イタリアでも日本でも、「麦っぽい粒」の意味。…確かにね。ラテン語は、言葉のひとつひとつに意味があり、ちょっと漢字のつくりと似ているなと思うこともしばしば。歴史の長い国の言葉は、似ているのかもしれません。