イタリア 万歳

その発祥はなんとローマ時代!
実は歴史の長い、愛のイベントなのです。
(text & photo by 岩田砂和子)

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2月14日は、「聖人サン・バレンティーノの日」。いわゆるバレンタイン・デーですが、イタリアでは別名「Festa degli innamorati(フェスタ・デッリ・インナモラーティ)」と呼ばれています。日本語で言えば「恋人たちの日」。チョコレートで愛を告白するというより、「すでに」愛し合う人々がお互いの愛情を確かめるためのお祭りです。

恋人同士や夫婦でロマンチックなディナーに出かけたり、ちょっとしたプレゼントを贈りあったりします。プレゼントは、花束や本やアクセサリーなどいろいろで、特にチョコレートである必要はありません。バレンタインデーの歴史を紐解くと、チョコレートが関わってくるのは19世紀の中ごろ。イギリスのキャドバリー社が美しい小箱入りのチョコレートを、この日用に発売したことがきっかけだそう。日本では、20世紀の初頭に神戸モロゾフが日本国内英字新聞に発表した広告で、初めて「バレンタイン・チョコレート」の文字が登場します。そして、1950年代に伊勢丹とメリーチョコレートが共同で企画し始めたキャンペーンによって、「チョコレートで男性に愛を告白する」というブームが起こったそうです。

イタリアでチョコレートのプレゼントというと、春にあるパスクア(イースター)の卵型のチョコレートが印象的で、バレンタインとチョコレートが今ひとつ結びついていない感じがあります。もちろん、イタリアのチョコレートメーカーも頑張って、この時期いろいろとキャンペーンをやっていますが、「商業的なブームに乗るのはイヤ」というイタリア人が多いからなのか、日本のような激しい盛り上がりはありません。

さて、このバレンタイン・デー。発祥はイタリアにあります。それは遡ること2000年…ローマ時代のことです。たいていのことはローマ時代に始まっていることが多くて、「ローマ人ってスゴイ!」と思わずにはいられません。市民政治しかり、ジェラートしかり。「すべての道はローマに続く」けれども、「すべての道もローマから始まっている」ともいえそう。

ローマ時代には、イタリアも今のようなキリスト教が主流の国ではなく多神教国家。ローマ国家を守るジュピターや、軍神マルス、美の女神ヴィーナスなど、さまざまな現象を担当する(?)神様がいました。そして、若い戦士に活力を与え、出産、すべての女性のための神ジュノーのお祭りが2月14日にあり、若い男女が出会うきっかけのイベントが開催されたそうです。それは800年も続きましたが、ローマ皇帝クラウディウス2世により「故郷に愛するものを残してきた戦士は士気が落ちる」と言う理由で禁止されてしまいました。

そこで、恋愛を禁止された兵士たちを気の毒に思ったバレンティーノ司教が、皇帝に秘密で兵士たちの結婚を奨励。しかし、それがローマ皇帝に知られることとなり、処刑されてしまったのでした。その殉教の日が西暦270年の2月14日。「人々の愛情を守ろうとしたバレンティーノ司教を偲ぶ日」というのが正しいバレンタインデーというわけなのです。

ところで、イタリアでは、2月14日は恋人たちの日ですが、シングルの人はどうするか?実は、2月15日に「シングルの日」というものがあります。3月14日のホワイトデーのようにバレンタインデーから派生して、各国、いろいろなイベントが生まれているんですね。

ワンポイントイタリア語講座

意味: 私の心にいつもいる○○○へ

イタリアで、アモーレな相手にプレゼントを贈るときによく添えられる言葉。「クオーレ」は心。「アビタ」は動詞・住むです(原形は「Abitare アビターレ」)。心に住んでいる君に…。愛する人ってそんな感じですよね。やっぱりイタリア人って詩的!バレンタインのチョコレートにこんな言葉を添えてみてはいかがでしょう?