イタリア 万歳

「初物」ワインを開けて、
秋の夜長をイタリア風に楽しんで。
(text & photo by 岩田砂和子)

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11月6日、今年の新ワイン「ノヴェッロ」が解禁になりました。「ノヴェッロ」は、その年に収穫されたブドウで作る早作りのワインのこと。いわゆる「新ワイン」のことです。「新ワイン」と言えば、フランスのボージョレー地方で作られる「ボージョレー・ヌーヴォー」が有名ですよね。フランス語の「ヌーヴォー」と同じ意味のイタリア語が「ノヴェッロ」となります。

イタリアのノヴェッロの解禁日は、11月の第3木曜日と定められるボージョレーより一足早く、11月の第1月曜日。前日の夜中12時には、カウントダウンパーティーが開かれます。と言ってもかつての日本のヌーヴォーブームという程、大げさに盛り上がるものではなく、ワイン好きな人々の間で密かに行われる程度。エノテカ(ワイン酒屋)やスーパーマーケットに「Novello」印のワインが山のように並び始めた頃、一般の人々はようやく「ああ、今年のノヴェッロが出たんだね。秋だね~」としみじみと気づく感じです。マスコミの戦略に踊らされることなく、のんびりしているあたりがとてもイタリアらしくていいなぁと思います。

それでも11月にノヴェッロを試すのは、お楽しみであります。なぜなら、イタリアでは、ガメイ種のブドウのみをつかったボージョレーとは違って、各地・各カンティーナからさまざまな種類のノヴェッロが登場するから。サンジョベーゼ100%のノヴェッロや、シチリアの銘ワイン・コルヴォのノヴェッロなどなど、銘柄は種々さまざまに、その数は全土で100種近くにものぼります。試しがいがあるってもんですよね。

「初秋に収穫されたブドウがそんなに早くワインになっちゃうの?」と不思議に思う方もいるかもしれません。通常のワインは、熟成に最低でも数ヶ月はかかるもの。なぜにノヴェッロは、こんなに早く出荷ができるのか?その秘密は工程にあります。ノヴェッロは、炭酸ガスの力を借りる「Macerazione carbonicaマチェラツィオーネ・カルボニカ」(炭酸ガス浸漬法)と呼ばれる特別な方法で生産されるため、発酵がたったの8~10日で完成されるのです。

そのため赤ワイン独特のタンニンの渋みや酸味が少なく、果実味が引き立ったボディの軽い、飲みやすいワインとなります。白ワイン同様に少し冷やして飲むと、より果実味が引き立って美味しくいただけます。あわせる食事は、ワインの味を消してしまわないような、さっぱりとしたものを選ぶのがオススメ。最近、イタリアでも流行中の「赤身の魚に赤ワイン」を試してみるのもいいかもしれませんね。

ヌーヴォーはボージョレーのみにあらず。イタリアから届くさまざまな種類のノヴェッロで秋の夜長を楽しんでみてはいかがでしょう?ちなみに、「初物」ですから後生大事に保管するのはちょっとした間違え。「いやいや、今年も豊作ですな。」とお祝いする意味合いのワインだからこそ、味わうというよりは、パーッとコルクを開けて、パーッと飲みきるのが正しいノヴェッロの飲み方なのです。

ワンポイントイタリア語講座

意味: このワインにはどんな料理が合いますか?

ワインの醍醐味は、料理や食材との組み合わせを楽しむこと。値段が高いから美味しい、安いからまずい。ということはありません。知識がなくても自分の舌を信じて、どの料理と合うか、お互いの味が引き立つかをテーブルでおしゃべり。ワインが1本あれば、家の食卓も盛り上がります。