イタリア 万歳

美味しいものは徹底的に楽しむのがイタリアの流儀。
今回は、イタリアの激ウマチーズ事情をお届けします。
(text & photo by 岩田砂和子)

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パスタ料理やピッツァなど料理の具材としてはもちろん、そのまま食べても美味しいチーズは、どこの家庭の冷蔵庫にも2~3種類は常備されているもの。フランスやスイスと並んでチーズの生産量が高いイタリアには、なんと400種類以上ものチーズがあると言われます。かの有名なパルミッジャーノ・レッジャーノやモッツァレッラをはじめとし、イタリア各地で、地方色が豊かな伝統のチーズが作られています。

マルケ州の特定の洞窟穴で熟成させるペコリーノ・ディ・フォッサ、胡桃の葉で包んで熟成させるトスカーナ州ピエンツァのフォリオ・ディ・ノーチ、ペペロンチーノやぺぺ・ネーロを入れたシチリアのプリモ・サーレなどなど、イタリア国内にいても、ご当地に行かなければなかなか「本物」に出会えない、知られざる地域限定チーズもてんこもり。こだわりのあるアリメンターリ(食料品店)なら、地方の珍しい逸品も見つかりますが、イタリア全土のチーズを制覇しようと思ったら「全国チーズ発掘の旅」にでも出ない限りちょっと無理。流通の問題かニーズの問題か、職人系の希少なチーズは遠方にまで届かないから。美味しいものは地元で食べちゃうんですね。

チーズが揃うアリメンターリにはたいてい知識豊富な店員さんがいて、チーズにまつわるストーリーや生産者の想いやこだわりまで説明してくれます。初めて見るチーズでも、ウンチク話を聞けば興味も増して味わい深さもひとしお。量り売りが基本だから、「じゃあ、50gずつ下さい。」とお試しサイズで買えるのも便利です。熟練の職人さんが丁寧に作るチーズたちは、切って並べるだけでも十分の存在感。そこにパンとワインさえあれば、立派なチェーナ(夕食)が完成します。シンプルな風味のチーズならそのままで、癖のあるチーズなら無花果や干しブドウなどのドライフルーツ、ジャムやハチミツを添えて。塩味や臭みの強いチーズには、トロリとした甘さが相性抜群。熟成の進んだ羊のペコリーノチーズにリンゴのジャムを乗せたり、パンにゴルゴンゾーラを乗せてハチミツをたら~り。オーブンで軽く焼いてアツアツトロリ、臭くて甘くてなんともはまる味。ボディのしっかりした赤ワインと合わせて、どっぷりと濃厚な味覚に酔うのはたまりません。

チーズそのものの風味や食感、ワインとの相性、ついでにパンとの相性、ジャムやハチミツとの相性、そしてアリメンターリで聞いたウンチク話…。美味しいチーズに出会ったら、それでなくてもおしゃべりなイタリア人の口はもう止まりません。延々語り合いながら珠玉のチーズを味わい尽くす。チーズとパンとワインのシンプルなテーブルは、イタリア人をより饒舌にする危険な(?)食卓でもあります。美味しいものは徹底的に楽しむ。そんなイタリア的生活快楽術のひとつが垣間見られるわけです。

ワンポイントイタリア語講座

意味:「なんて美味しいんだ!」

「美味しい」の意味で知られるブォーノ。「Che(ケッ)」をつけるとより感動が表されます。「美味しい~」というより、「うわっ、旨い!」といった感じに。
EX; Che buono questo formaggio! (ケッ・ブォーノ・クエスト・フォルマッジョ) 「このチーズ、激ウマ!」