イタリア 万歳

イタリアの家庭には、放射熱を利用した輻射方式ヒーターが標準装備。
が、イタリアらしい問題点が?!
(text & photo by 岩田砂和子)

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ブドウの収穫も終わり、フンギポルチーニも出回り、イタリアもいよいよ秋。街行く人々の姿も革のジャケットやブーツ姿が増えてきました。朝晩の気温もグッと下がり、そろそろ暖房の出番といったところ。燦々と降り注ぐ太陽のイメージが強いイタリアではありますが、やはり寒い冬は訪れます。

イタリアの家庭の暖房アイテムといえば、「Termosifone(テルモシフォーネ)」または「Riscardamento(リスカルダメント)」と呼ばれる温水循環式ヒーターです。見た目は、最近巷で話題の「オイルヒーター」の大型版といったところ。オイルの替わりにフィン内を温水が循環しますが、輻射熱によって部屋全体をソフトに暖める方式は同じです。ぽってりとしたクラシカルな鉄製のものもあれば、凹凸のないパネル風のシャープなものもありますが、基本的なフォルムは何十年(何百年?)と変わらず「あの」スタイル。イタリアでは、暖房といったらこのヒーターを思い出す位に「お馴染み」のものでもあります。イタリアに限らず、ヨーロッパでも広く一般的に使われています。

イタリアに限らず、ヨーロッパでも広く一般的に使われている輻射方式のヒーターは、直接、壁や床に設置されている、いわば標準装備のアイテム。各部屋はもちろん、廊下やバスルームなどにも設置されています。どんな部屋のインテリアにも調和するミニマムなデザイン、そして温風や赤外線が出ず、さり気なくポカポカと部屋全体を暖める輻射方式のこの暖房システムは、いかにも暖房しているといった大げさな雰囲気にならないところがスタイリッシュ。洗練された暮らしの中に溶け込むデザインと機能で、ヨーロッパでは長く愛されている暖房器具なのです。

熱の自然対流で壁や床、人の表面温度を上げる輻射方式のリスカルダメントは、ヒーターのそばにいなくても半袖で過ごせる程、部屋全体が均一に暖まります。その上、温風によって埃が舞い上がることもなく、音もなく静か。居心地のいい冬の暮らしが実現します。が、イタリアの直接設置型のリスカルダメントには、困ったことがひとつだけあります。それは、なんと自分でスイッチのON/OFFができないところ!イタリアのリスカルダメントには2タイプあり、 Autonomo(アウトノモ)と呼ばれ各家庭で点けたり消したりができるものと、アパルタメントの地下にあるボイラー室でまとめて管理するもの。ローマの我が家は、後者のタイプ。

このタイプは、点ける時期もアパルタメントごとに決められています。故に、「寒いな~」と思っても、決められた時期(たいてい11月上旬)になるまでは我慢。そして、11月を過ぎて「今日は暖かいから暖房がなくても大丈夫」といった日でも、強制的にスイッチON。しかも、1日中点いているわけではなく、朝 8時~夕方17時までとか、明け方4時から午後2時までなど、これまたアパルタメントの管理次第。我が家の場合は、午前遅めの時間から夜9時ごろまで。明け方までは十分、余韻で部屋の暖かさがキープできるので、あまり不便はないのですが、夕方にリスカルダメントが切れてしまう家では、夜中に寒~い思いをすることも。誰が時間割を決めるのか…本当に不思議なイタリアのシステム。

各家庭に標準装備される程に、そのデザインと機能が認められているリスカルダメント。インテリア性と機能性を兼ね備えたこんな便利な暖房アイテムはないな~と使いながら思いますが、なぜか全館管理されてしまうあたりが玉にキズ。点けば最強の暖房アイテムだけに、他の暖房器具を買い足す気も起きず、10月下旬、ちょっと寒くても「もう少しでリスカルダメントが点くはず…」とついつい我慢してしまうんですよね。今、我が家では夜は厚着をしてますが、11月、リスカルダメントが点いたら半袖に戻ります。

ワンポイントイタリア語講座

意味: 私たちのアパルタメントのヒーターはいつつくの?

暖房が自分の意思で決められるのが当たり前の日本では、妙な質問?でも、ここローマでは、こんな会話が普通にされます。毎年、リスカルダメントの開始時期もバラバラで、寒くなり始めると「いつからなの~?!」と話題になるのです。