イタリア 万歳

日本でもおなじみのカルボナーラ。
本場ローマでは生クリームは使いません。
(text & photo by 岩田砂和子)

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日常の食卓に、当たり前のように郷土料理が並ぶイタリアでは、各町にその町伝統のパスタ料理があります。ここローマでは、トマトソースとパンチェッタ(豚のばら肉の塩漬け)のブカティーニ・アッラ・アマトリチャーナ、ローマ伝統手打ちパスタ、モチモチのトンナレッリを使ったトンナレッリ・カッショ・エ・ペペ(カッショカバッロチーズと黒コショウだけのシンプルなパスタ)…、そして、スパゲッティ・アッラ・カルボナーラがそれ。カルボナーラは日本でも有名なパスタ料理のひとつですが、ローマの伝統パスタ料理でもあります。

たっぷりとかけた黒コショウがまるで炭「カルボーネ」をまぶしたように見えるため、炭火焼職人「カルボナーロ」のパスタ、つまり「カルボナーラ」と呼ばれる所以とか。しかし、物の本を紐解くと、サルデーニャ州の小さな村カルボニアの職人が仕事を求めてローマにやってきたときに作ったパスタでその名前が残されている...とか、かつてナポリにあった秘密結社カルボネリアのメンバーが、隠れ家でも作れる簡単な料理として発明した...などなど、様々な説が存在する模様。また、第二次世界大戦中にローマにあったアメリカ軍の闇市で入手できる卵とパンチェッタを利用して作ったのが始まりという説もあります。オフィシャルに公表された1944年以前のレシピが見つからないため、今ではこれが一番の有力説になっています。

さて、そんな本場ローマのカルボナーラですが、日本で知られるカルボナーラとは少々異なります。ベーコンと生クリームを使った白っぽくてクリーミーなカルボナーラが日本風だとすると、本場ローマは黄色くてねっとりとしたコクが特徴。本場ローマ流では、生クリームは使いません。

~本場ローマのカルボナーラ~
【材料 4人分】
卵の黄身 人数分
パンチェッタ 100g 厚めのブロックに切る
ペコリーノ・ロマーノ(パルミッジャーノ・レッジャーノでもOK)100g
ニンニク、玉ねぎ 適宜 みじん切り
オリーブオイル、塩・黒コショウ
パスタ(スパゲティ、もしくはリガトーニ)400g

1.たっぷり目のお湯を沸かし、塩を入れ(1リットルに対して大さじ1杯)パスタを茹でる。 2.オリーブオイルを熱し、ニンニクと玉ねぎを弱火で炒め、香りがたってきたら、パンチェッタを加え好みの状態に炒める。(カリッとさせてもよし、少しやわらかい状態でもよし。) 3.卵を解きほぐし、粉状にしたチーズを加える。 4.パスタが茹で上がったら、2.の火を止めたものに加えて軽く混ぜ合わせた後、3.とたっぷりの黒コショウを加えてよく混ぜる。

材料さえ揃えば、10分で出来る本場の味。家庭料理だけに各家庭それぞれのレシピがありますが、ポイントは、卵とチーズをよく混ぜ合わせたものを、パスタの余熱で半生状態&チーズが程よく溶けた状態にすること。生クリームを使わなくても存分にクリーミーな感じに仕上がります。また、パンチェッタを炒めるときのオリーブオイルはたっぷりとパンチェッタが浮かぶ位使うのも本場の味に近づけるコツ。生クリームを使わなくてもカロリーはだいぶ高くなってしまいますが…。

ワンポイントイタリア語講座

意味: この町の伝統料理は何ですか?

ミラノなら、コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ、フィレンツェならビステッカ・アッラ・フィオレンティーナなど、イタリアのトラットリアには、必ずその町独特の伝統料理があります。その代わり、伝統を重んじるコテコテのトラットリアには、その町の料理しかありません。ローマの気の荒いトラットリアで「リゾット・アッラ・ミラネーゼはありませんか?」なんて聞いたら、「とっとと帰れ!」なんて言われることも(本当)。